對影成四人
すっかりいい気分で表に出ると、夜空に丸々とした満月がかかっていた。その日、十月六日は旧暦の八月十五日で、中秋の名月の名に恥じない月を見上げながら、私は風流にも李白の詩なんぞをひとくさり詠みたくなった。
花間一壺酒(花にうずもれて酒ひと壺)
獨酌無相親(親しい者もなく独酌で)
擧杯邀明月(酒杯を挙げて明月を迎えれば)
對影成三人(自分の影と合わせて三人となる)
「月下獨酌(げっかどくしゃく)」の有名な冒頭である。月と酒はかくも相性がいい。自分と影と月だけを友として酒を飲む。もし李白が灯台の下で月見酒と洒落込んでいたなら、最後の句は灯台も加わって「對影成四人」となるだろう。
李白がこの詩を本当に酒を飲みながら即興で詠んだのか、はたまた不眠症になるくらい悩みに悩み抜いてつくったのか、私は知らない。どっちだっていいじゃないか。作為があろうがなかろうが、いいものはいいし、残っていくものは残っていく。ただそれだけの話だ。
月明かりに浮かれ、そのまま宿へ帰るのももったいなく、ついついはしご酒と相成った。私は少々酔っていた。
翌朝、佐世保へ戻った私たちは、その足で最後の灯台へと向かった。灯台は待ってくれるけど、時間は待っちゃくれない。
