アイデアや遊び心を形にする匠の仕事

――富永さんは、いつごろからこちらに?
富永 私は2011年、リゾートの運営母体が星野リゾートに切り替わったタイミングで、施設管理マネージャーとして赴任しました。主な仕事は文字通り、施設管理や修繕ですが、その枠を超えた仕事ができるところにやりがいを感じています。

――例えばどんなお仕事を?
富永 海に浮かぶ「朝焼け海上ラウンジ」は現在のもので4代目なのですが、初代から設計・開発に携わっています。ビーチを見渡す「ガジュマルテラス」、ガジュマルの木陰にハンモックを吊るした「ガジュマル広場」、海上に移動式のバーカウンターを置いた「絶景海上ビアガーデン」、「バレルサウナ」のデッキに至るまで、ほとんどが我々スタッフによる手づくりです。業者に一任するのではなく、自ら手を動かすことで、アイデアを迅速に具体化できるのが強みです。
大久 他にあまり例のない、初めての試みが多いので、小さな失敗はたくさんあるけど、少しずつ改良してきたよね。



――ビーチまわりの施設、ほぼすべてを手掛けてこられたのですね。
富永 そうですね。昔からものをつくるのが好きだったし、施設管理の仕事で培った知識や技術をフルに使って、ゲストの記憶に残る場所を自分たちの手でつくるのは、大きな喜びです。
――「朝焼け海上ラウンジ」の発想はどういったところから?
富永 以前はよく大久さんと2人で、夜明け前の時間帯に砂浜を整備していたんですが、朝日が昇る様子は何度見ても感動的で。私たちだけで楽しんでいるのはもったいないと思い、会議で提案したのが始まりです。

初代は、船をつくるときに使うFRP(繊維強化プラスチック)という素材を薄い木製の板に巻いて作ったのですが、動かすのに重機が必要なほど重くて、私か大久さんがいないと使えない状態でした。
それを少しずつ改良していき、いまの4代目は発泡スチロールに特殊なコーティングを施したもので、力持ちが3人いれば持ち上げられるくらいになっています。お椀のような形は意外と安定感があって、波を受けても揺れがすぐに収まるように設計されています。

――軽さ、丈夫さ、快適性も格段にアップしたわけですね。
富永 「絶景海上ビアガーデン」は、星野リゾート トマム(北海道)の「雲海テラス」にある展望施設のようなものをというスタッフの要望から生まれました。潮の満ち引きに合わせてスタッフがバーカウンターを動かせるよう、持ち運びしやすく、かつ安定感のあるものを目指しました。おかげさまで毎年ご好評をいただいています。
――空や海の色は刻々と変わっていくし、ときどき足元を魚が通ったりして、ずっと座っていたくなる空間でした。
富永 日々、刻々と変化していく自然に囲まれていると、それだけで満ち足りた気持ちになります。何もない島ですが、目に見えない贈り物をたくさんいただいている。ゲストの皆さんにもその豊かさをぜひ味わってほしいと思っています。

星野リゾートが国内外7カ所に展開するリゾートホテルブランド「リゾナーレ」。その土地ならではの施設デザインや体験を通して、想像を超える滞在を提供しています。
日本最南西端の沖縄県八重山諸島に位置する「リゾナーレ小浜島」では、プライベート感抜群のビーチを中心に、広大な敷地を満喫するさまざまな仕掛けやサービスを展開。後篇で詳しくご紹介します。

リゾナーレ小浜島
所在地 沖縄県八重山郡竹富町小浜2954
電話番号 050-3134-8093(リゾナーレ予約センター)
宿泊料金 1泊20,700円~(1室2名利用1名あたり・税込・食事別)
客室数 60室
チェックイン 15:00/チェックアウト 11:00
アクセス 石垣離島ターミナルより小浜港行きフェリーで約25分、小浜港から送迎バスで約10分
https://hoshinoresorts.com/ja/hotels/risonarekohamajima/
◆Wi-Fiあり

Column
ヒットの立役者に直撃! 星野リゾート ブランドヒストリー
国内外にさまざまなコンセプトで71の宿泊施設を運営する星野リゾートは、快適なステイだけではなく、その土地だからこそ体験できるアクティビティやプログラムにも定評があります。アクティビティやプログラムは長年にわたり試行錯誤を重ね、ブラッシュアップを続けていますが、そこには必ずキーパーソン=「立役者」が存在します。今連載ではそんな「立役者」のインタビューを通じて、星野リゾートの新たな魅力をお届けします!
2025.10.04(土)
文= 伊藤由起
写真=志水 隆
写真協力=リゾナーレ小浜島