この記事の連載
#1 尾瀬十帖ガストロノミー
#2 尾瀬十帖アクティビティ
一番のお楽しみは、地元の旬食材を活かした美食体験
尾瀬十帖のレストラン「青山緑水」。中国の禅語で、森羅万象、自然こそが人間の住処であるという意味だそう。料理のクオリティーを上げるために完全二部制(16:30/19:00)。
自然豊かな絶景のロケーションに、温泉やサウナなどの施設、空間や客室へのこだわり、サービスやアメニティの細やかさ、多様なアクティビティなどなど「尾瀬十帖」にまつわる魅力はいくつもあるけれど、今回の目的は“地元の旬食材を活かした美食体験”。舌を楽しませるだけでなくその土地の物語を感じさせる……そんな旅の記憶をより深く豊かにしてくれる10品のコース料理をいただきます。
地域の風土・文化・歴史を料理に表現するローカル・ガストロノミーを踏まえつつ、さらに一歩踏み込んで「文明と原始の融合」が料理のテーマ。
フランス料理出身の青柳拓広シェフが、自然と食材に敬意を込め「焼いて美味しいものは焼くだけ」「蒸すと美味しいものは蒸すだけ」という原始的な調理方法と、最先端の調理方法も用いて魚沼・奥只見の食を表現。
「こちらのコース料理についての評判は耳にしていたので私の中でのハードルは既にかなり上がっていたものの、想像以上。美味しくて、驚きがあって、楽しくて思わず会話も弾みます。料理がテーブルに運ばれる度に気づけば感嘆の声が漏れていました(笑)。飲み物は特別なものを除いてオールインクルーシブなので、料理に合わせてお酒を楽しめるのも嬉しい」(星野さん)
日本酒、ワイン、ビール、季節のオリジナルカクテルなどのアルコール類、緑茶、ハーブティー、季節のオリジナルジュース、自家製コーラなど、飲み物の配慮も細やかです。
「奥只見の森」と名付けられた盛り合わせ。ほんのり苦味のあるアケビの新芽、身欠きにしんは、この土地でよく食されるもの。黒い小枝に見えるのは、高山植物の松の葉をスティック状にしたもの。
初めて食べる松の葉のスティックの新食感に思わず笑顔。「お土産話のネタにいいかも、程度に思って口の中に入れると、フワッと広がる松の香りとスナック菓子のような口当たりに驚きます。すごく美味しい! 確かに只見の森の景色が頭の中で広がります」(星野さん)お酒にも合います。
天然のカジカのお寿司に添えられているのは、胡桃とミョウガの花。どのメニューも、添えられた山菜や野菜の香りと素材とのバランスが絶妙。
滝雲をイメージした季節野菜のサラダ。トマトを使った泡のソースは雲をイメージしているのだそう。視覚と味覚の両方で楽しめます。
素材の美味しさを活かしたヤングコーンは、シンプルに焼いたものとポタージュどちらも美味。ヒゲまで美味しくいただきます。
山菜やハーブを合わせた鮎のコンフィ。山をイメージした緑のソースは新潟県魚沼地方の郷土料理“きりざい”。「きりざいは以前、ごはんに合わせて食べたことがあったのだけど、印象が変わりました。瑞々しくてすごく美味しい! 」(星野さん)その土地の郷土料理の美味しさに気づくというのも、素晴らしい旅の体験のひとつ。
鹿のロースは、口の中でとろける新潟産「焼きなす(なすの品種)」と一緒に。「一見意外なこの組み合わせが、至高の組み合わせでした」(星野さん)
最後はわらびご飯とお味噌汁と香の物で。
デザートは新潟の新しい名物「温泉芒果」。
2025.10.11(土)
文=天野真由美
写真=峰岡歩未