中野京子が伝授!
名画を10倍楽しむ鑑賞法

 中野さんの絵画エッセイを読むと、難解な名画が、身近で面白いものに見えてくる。美術展でもそんな風に楽しみたい、という人に贈る、今年おすすめの3つの展覧会ガイド。

» 行けば必ず元気をもらえる「こども展」
» 印象派の傑作が揃う「ウフィツィ美術館展」

オルセー美術館展
印象派の誕生 ―描くことの自由―

(国立新美術館)

印象派の殿堂がかつてないスケールで日本に上陸!

 「オルセー美術館展 印象派の誕生」がこの夏、東京で開催される。かつてパリの美術界を騒然とさせた、1874年の第1回印象派展。「印象派の誕生」から140周年を迎える今年、その「衝撃」を今ふたたび、というのが今回のテーマ。『笛を吹く少年』のマネにはじまり、モネ、ルノワール、ドガ、セザンヌらお馴染みの巨匠作品はもちろん、コロー、ミレー、カバネルといった、レアリスムからアカデミスムまでの傑作など、印象派の殿堂、オルセー美術館を代表する名画84点が来日する。

 中野さんは「今回のオルセーは、ちょっとすごい。いい作品が来ますね」と太鼓判。印象派の誕生から約20年間の濃密な絵画史を再考できる、またとないチャンスでもある。

ナポレオン3世がお買い上げ! これぞアカデミック・ポルノ?

『ヴィーナスの誕生』 アレクサンドル・カバネル 1863年 油彩・カンヴァス 130×225cm (C) RMN-Grand Palais (musée d'Orsay) / Hervé Lewandowski / distributed by AMF

誰が見てもほれぼれする、完璧な曲線!

「ボッティチェリの“貝殻の上に立つヴィーナス”の清廉なイメージを覆す、なまめかしいヴィーナス。完璧な人体比率に彫刻のようなツルピカ肌、写真みたいな質感(わざと筆のタッチを見せる印象派とは真逆)、これぞアカデミー所属作家のなせる業。クピドたちはくびれと呼応するように連なり、ほつれた髪も海に横たわる不思議さも魅惑的。現代でも映画や小説に登場する絵です」

2014.06.20(金)
文=宮下哲

CREA 2014年7月号
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この記事の掲載号

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