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 動物本来の動きを見せる「行動展示」で旭山動物園を再建した元園長・小菅正夫さんの著書『聴診器からきこえる 動物と老いとケアのはなし』(中央法規出版)の発売を記念して、8月3日(日)、東京・紀伊國屋書店新宿本店にてトークイベントが開催されました。

 スペシャルゲストとして「CREA」2025年夏号にも登場いただいた令和ロマン・松井ケムリさんが出演。来場チケットは即完売し、オンライン配信も行われたイベントは、動物好きの松井さんが本の中から気になったところを掘り下げていく内容に。

 ざっくばらんに話す小菅さんから突然クイズを投げかけられたりと、圧倒される松井さん。CREA WEBでは、前後篇でレポートします。


「在来種はどっち?」突然のゼニガメクイズからスタート

松井ケムリ(以下、松井) 対談形式であんまり横並びってないですよ。記者会見みたいになってますね。

小菅正夫(以下、小菅) 謝罪記者会見?

松井 何も悪いことはしてないです(笑)。ちなみに、僕のことは……知っているわけがないですよね? お笑い芸人をやっています。松井ケムリと申します。

小菅 お笑い芸人で動物好きっていうと、柴田さん(アンタッチャブル)。あの人はテレビで、動物、動物、動物って言ってるから知っています。

松井 僕もこれからテレビで、動物、動物、動物と言っていくので、これからよろしくお願いいたします。本を読ませていただきました。先生の動物との原点としてあるのは、幼少期に飼っていたゼニガメの冬眠を失敗して死なせてしまったことなんですよね。

小菅 子供の頃、屋台でゼニガメが売っていたんです。生き物はなんでも好きだったから買ってきて飼育して、夏の間はがんばって生きてくれたんだけど、秋から冬にかけて突然、餌を食べなくなったんです。で、うちのおばあさんが「カメが餌を食べなくなったら、真綿に包んでタンスに入れておけば、春まで冬眠するよ」と言うから、素直にその通りやったんですよ。だけど、春には干からびてしまっていた。何が悪かったんだろうと思ったところから、毎年、少しずつ環境を変えてやるんだけど、その度に失敗してしまったんです。そこから、冬眠に成功するまでにどれだけかかったと思いますか?

松井 5年くらいですか?

小菅 動物園に獣医として入って、カメのことを知り、うちの息子と一緒にカメを飼ってからです。

松井 じゃあ、最初の失敗から30年くらいあとにようやく成功したんですね。カメの冬眠はそれくらい難しいものなんですか?

小菅 難しいというより、カメを知らないで冬眠させていたことがいけなかったということです。カメというのは、水槽の中に水を入れると首をあげて息を吸うでしょ? ですが、寒くなってくると首をあげなくなるんです。だから、水槽には落ち葉をたくさん入れてやる。どんなに凍っても落ち葉の層までは凍らないんですよ。

松井 カメって、春が来るまで水中では息をしないんですか?

小菅 息を吸うというのは、酸素と二酸化炭素を肺で交換するためにするわけでしょ。じゃあ、冬眠中はどこで呼吸すると思いますか?

松井 皮膚ですかね。

小菅 よく知っていますね。冬眠中は代謝がものすごく低くなるから、それに見合った酸素を供給できればいいんです。ちゃんと冬眠させることができたら、カメは30年くらい生きるんですから。

松井 ちなみに、先生が飼われたゼニガメって、イシガメとクサガメどっちだったんですか?

小菅 両方飼ったことがありますよ。クサガメとイシガメ、在来種はどっちだと思いますか?

松井 イシガメですよね。クサガメは中国由来でしたっけ。

小菅 試験をしたわけじゃないけど、めちゃくちゃ詳しいですね!(と言いながら、松井へ賞賛の拍手をおくる)日本は今、イシガメよりクサガメのほうが多いんですよ。もっと多いのがアメリカアカミミガメですがね。松井さんが言った通り、クサガメは江戸時代くらいに中国からペット用で連れてこられたものなんですよね。

松井 かなり前から日本に入ってきていたんですね。

小菅 日本では増えてるんですが、肝心の中国ではいなくなってるんですよね。じゃあ、イシガメとクサガメの違いは?

松井 ……試験されてますよね?(笑)顔もだいぶ違いますけど、柄ですか?

小菅 キールが甲羅の真ん中にまっすぐ1本しかないのがイシガメ。横っちょにもう1本ずつ入っているのがクサガメです。

2025.08.07(木)
文=高本亜紀
写真=細田 忠