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 東京・上野の東京国立博物館 平成館で、9月21日まで特別展「江戸☆大奥」が開催されている。江戸時代、徳川将軍の御台所(正室)や側室、女中らが生活していた「大奥」。

 今回の展覧会では、歴代御台所や側室、姫君たちゆかりの品々をはじめ、約180件にのぼる貴重な作品を展示。テレビドラマやマンガで描かれてきた想像の世界とは異なる、大奥で生きた女性たちの“リアルな姿”に迫る。


江戸庶民があこがれた「大奥」。ドラマで着用された衣装も!

 江戸城のなかでも大奥が設けられたのは、本丸、二の丸、西の丸の3か所。本丸は「表」、「中奥」、そして銅塀で仕切られた奥に御鈴廊下(おすずろうか)のみでつながれた「大奥」に分かれていた。大奥は将軍が暮らすプライベート空間であり、当時の庶民にとって決して足を踏み入れることができない未知の場所。江戸末期には大奥を舞台に描かれた講談や歌舞伎、読み物などが登場し、人気を集めたという。

 第1章「あこがれの大奥」では、江戸時代から現代にいたるまで、庶民があこがれ、想像をふくらませた大奥を紹介している。

 なんといっても見どころは、2023年に放映されたNHKドラマ10『大奥』で実際に用いられたきらびやかな衣装。「御鈴廊下」のセットも再現され、美しい映像とともに、束の間、大奥の世界に浸ることができる。

 大奥に暮らす女性たちの生活を描いた錦絵『千代田の大奥』は明治時代に活躍した絵師・楊洲周延(ようしゅう・ちかのぶ)によるもの。かるたで遊んだり、お花見を楽しんだり、和歌を詠んだり……大奥に仕える女性たちの様子がいきいきと描かれている。

2025.08.09(土)
文=河西みのり
撮影=平松市聖