Q「あんなに好きだった夫が、なぜか疎ましい」
司会 次は夫についてのお悩みです。
Q3 夫は大学の2年先輩です。彼には恋人がいたのですが、ひたすら慕い続けて彼女になることができて、結婚して6年経ちます。私が妊娠しているとき、彼が汗びっしょりになってパスタを作ってくれました。その姿を見て「げ、なに汗かいてんだよ、食べたくない」とイラッとしました。
妊娠によってホルモンのバランスが崩れているからだと思っていたのですが、出産後も気分が変わりません。靴下から糸が出ていたり、つまずいたりするのを見ただけで「わ、ダサ」と思ってしまう。彼が何を言っても、何をやっても、軽蔑してしまうのと同時に、そんな自分を嫌悪する気持ちも湧きます。こんな思いでいるのは子どものためによくないと思います。離婚するのではなく、昔のような気持ちに自分を戻すということはできないでしょうか。

中野 カップルの会話を15分間聴くという単純な実験があります。その会話を聴くだけで、15年後に別れているかどうかが9割の確率で当たります。
会話を聴く際に注目する感情のひとつが「軽蔑」です。会話の中で相手に対して軽蔑に基づいた攻撃があるとき、カップルはほとんど愛情のある関係には戻りません。あなたも「ひたすら慕い続けていた」気持ちには戻らないと思います。
その「ひたすら慕い続けていた」彼には恋人がいたということに、私は注目します。男性がひとりで写っている写真と、男性の隣で女性が笑っている写真をランダムに何枚も女性に見せて、男性の魅力度を点数化するというテストがあります。その結果、かなりの点差で、隣で女性が笑っている男性のほうが魅力的に映るということが分かっています。
中野 あなたも彼に恋人がいたから魅力的に見えたのかもしれません。もしかすると、「人のものが欲しい人」かもしれないですね。それが悪いとは言いませんよ。そういう傾向は人間にはあるのですから。
ですから、荒療治でよかったら、夫に愛人を作ってもらうことです。
――(会場がどよめく)

中野 そうすれば、あなたは愛人と戦って夫を取り戻す気持ちになるかもしれません。
――「不倫しかできない」という女性からのご相談もありましたね。『悩脳と生きる』に収録されています。
中野 同じ理由ですね。シングルの人より既婚者のほうがモテます。既婚者の男性でもし、自分はモテると思っているとしたら、隣にいる妻のおかげですよ。だから妻に感謝の気持ちを伝えないといけませんね。
2025.08.09(土)
文=小峰敦子
写真=平松市聖