ウ・ミンホ 伊藤博文が実際にあのような言葉を周囲の人に言っていたそうです。それを知って私はそのセリフを入れたんですけれども、あの当時も良いソンビ(知識人や官僚など)や儒学者などもいましたし、逆に良くないソンビ、貴族階級の人もいました。そういった支配階級の人たちから迫害を受け苦しめられてきた人々は、それに対して抵抗することによって、強くなったのではないかなというように思うんですね。日本と違って、韓国は非常に激動の歴史を歩んできました。変化が非常に大きかったですし、良くないこともたくさん起きました。

 でも、そういった苦難が人々を強くしたのではないかなと私は思います。例えば「土地」(朴 景利)という韓国の有名な小説があるんですけれども、その中に書かれていたのが「韓民族というのはしぶとい生命力を持っている」ということ。だからどんな環境の中でも最後まで生き残る、最後まで諦めない、そういう民族性になったのではないかというように思います。

ヒョンビン そうですね、全面的に監督の話に同意するのですけれども、私からは監督とはまた少し違う観点からお話をさせていただくと、その単純な憤りや単純な抵抗というよりも、自分自身と自分の家族、周囲の人々、そして自分が生きる場所に対する愛情。そうしたところから生み出された強さなんではないか、というふうに私は思います。

――その強さをそれぞれご自身の中に感じますか?

ヒョンビン はい、あると思います。

ウ・ミンホ そうですね、私も韓国人ですから。そしてヒョンビンさんが今おっしゃったことにも、私もとても同感します。

「氷が様々に割れた形というのが、まるでアン・ジュングンの心の形のようにも感じられたんです」

――凍りついた大河(現在のロシア、北朝鮮、中国の境にある豆満江の設定だが、撮影はモンゴルのフブスグル湖で行われた)を渡っていくシーンがとても印象的だったんですが、ヒョンビンさんはあの場面で、何を考えながら演じていらっしゃったんでしょうか?

ヒョンビン 僕だけをここに置き去りにして、みんな逃げてしまったんだな、と(笑)。あのロケーションは、本当に記憶に残っているロケ場所の一つです。当時、あの場所に立っていた時に、不規則に割れている氷の形や、どこまでも続いていく湖に一寸先も見渡せないような感覚がありました。その自然環境から与えられたエネルギーや、その時感じた全ての感情が、その時代の中で生きていた大韓義軍の人々もこんなことを感じたのかな、こういう道を歩んだのかな、ということを考えさせ、それらがキャラクターを理解したり感じたりする上で非常に助けになったんです。

 そのようなロケ場所だったので、とても印象に記憶に残っているんです。そしてあの氷上に見える、氷が様々に割れた形というのが、まるでアン・ジュングンの心の形のようにも感じられたんです。

2025.07.29(火)
文=石津文子