「自分を律しなければ」と思った瞬間

――ぬるいですか? 演技の世界は、ぬるい人は生き残れないと思うので、奥平さんは違うのでは?

 ぬるいというか、皆さんがやさしいのでどこまでも甘やかされてしまいそうになるというか。例えば、この仕事をしていると、水を持ってきてくれたり、日傘をさしてくれたり、何でもしてくださるんです。環境も時代も違うので安易に比較できないかもしれないけど、自分を律しないといけないな、とは日々思っています。

 あと、昔と今で一番違うのは、手紙の文化だと思いました! 劇中に手紙を書くシーンや受け取るシーンが出てくるんですけど、僕自身は手紙をほぼ書いたことなかったんです。学生時代に学校でやった「自分への手紙」くらいかな……?

――奥平さん世代は物心ついた頃からスマホ、メッセージアプリだったという文化でしたか?

 小学校中学年か高学年くらいから、周りもみんなスマホを持っていました。だから手紙を書くということが、そもそもなかったんです。メッセージアプリは送ったら既読、未読とかわかるけど、当時は本当に手紙が届いているのか、読んでくれているのか、手紙を見られる環境にあるのかもわからない。そう考えるとすごいですよね。自分にとってのモチベーションって、やっぱり大切な人や家族からの言葉によるところが大きいと思うので、手紙が届いてものすごく喜んで読むシーンは「そうだよなあ」とわかる気がしていました。

――『雪風』では、寺澤一利役の竹野内豊さん、早瀬幸平役の玉木宏さんなど、名だたる先輩方と共演されています。撮影現場はいかがでしたか?

 皆さん、本当にやさしかったです。ただ、撮影現場でも役の上での位については意識をしていました。特に僕にとっては玉木さんが演じている先任伍長は、命を救ってくださった人ということもあり、本当に大きな存在です。先任伍長とのシーンはすごく大事にしたいなと思っていて。すごく親しく思っているけれども、自分は部下なので、特別な絆というか、そんな関係性をすごく感じていました。

――撮影裏では、玉木さんとシーンについてお話なさったりもしたんですか?

 まったく、なかったです(笑)。今回の現場に限らず、僕は基本的に先輩方とシーンについて話すことはないんです。「こうしたいんです」とは言わずに、段取りで一度やってみるというか。今回もそんなふうにしたんですが、玉木さんは受け止めてくださいました。絶対的な安心感がある方です。シーンのこと以外については、すごくお話してくださいました! 僕は空手をやっていたんですが、玉木さんは柔術をやられていて共通点があったことから、格闘技の話をよくしたり。何と言うか、そういう普段の会話があるから、本番とのメリハリができたのかなとも思います。裏の時間で本当にたわいもないお話がなかったら、めっちゃ固くなっていたのかもしれないなあと。

2025.08.11(月)
取材・文=赤山恭子
写真=志水隆
スタイリスト=伊藤省吾(sitor)
ヘア&メイク=速水昭仁(CHUUNi)