
事故物件住みます芸人として知られる松原タニシさんが新著『事故物件怪談 恐い間取り 4 全国編』(二見書房)を上梓しました。
全国津々浦々の事故物件を取材し、ときにはそこで暮らすというライフスタイルの中で綴った、松原タニシさんにしか書けないエピソードの数々は、ときに運命のいたずらのようなことが起きることも。
「なぜ僕は事故物件に住むのか」「なぜ人は事故物件に住みたがらないのか」。そんな問いかけから始まる本書から特別に2篇を抜粋してご紹介します。
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「老夫婦の家」

数年前、不動産屋をしながら芸人を続けるTHE石原さんに、ある一軒家を内見させてもらった。
「いまから行くのはおじいさんが亡くなった家でしたっけ?」
「そうそう、おじいさんが亡くなって、奥さんが施設に入ってて、子供も2人亡くなってるお家」
「あ、お子さんも亡くなってるんですね」
「まあ、お子さんって言っても2人とも70歳くらいだったのかな」
「ずいぶん高齢なお子さんですね」
「うん、おじいさんが確か98歳だったはずだから、お子さんもそれくらいになるよね。2人とも自殺して」
「自殺ですか」
「そうそう、兄弟2人ともね。1人は服毒自殺。もう1人はどうやって亡くなったかはわからないんだけど、自殺。2人の自殺はそんなに間が空いてないんだよね」
2025.07.26(土)
文=松原タニシ、CREA編集部
写真=志水 隆(人物)