この記事の連載

「絵」とフィクションが現実に訴えかけてくるもの

 第四章「スケッチの躍動」でメインとなるのは、最後の大作となった『かぐや姫の物語』。

 実は高畑監督は東映動画入社間もないころに、「ぼくらのかぐや姫」というメモ、竹取物語の再構成をノートに書き溜めていたそうで、これは第一章に展示されています。

 その覚書は非常に綿密なもので、既に構想がかなり練られていたことがわかります。その後、半世紀以上経ち、最後の作品がかぐや姫となるのは、なんとも運命的です。

 私が出演した『ホーホケキョ となりの山田くん』コーナーもありました。1999年にコンピューター彩色で水彩の表現を行うという非常に実験的な試みで、誰もがどこかで見かけたと感じる「家族」の日常を描く、先進性と普遍性を併せ持った作品でした。

 その試みが結実した作品が『かぐや姫の物語』と言われます。山田くんコーナーでは本編が一部流れていましたが、何気ないように見えて途方もない技術と枚数を重ねて作られたアニメーションなのです。

揺らがずに、伝えるべきことを描き続けた高畑勲監督の信念

 ミュージアムショップではここだけのオリジナルグッズも多数あり、そちらは後篇の記事で紹介します。

 今年は1945年の終戦から80年。Netflixで7月15日から配信が始まることも発表された『火垂るの墓』が再注目されています。終戦記念日に、7年ぶりの「金曜ロードショー」での放映も決定しました。

 高畑監督の作品は常に実験的な側面を持ち、根幹には常に強烈なメッセージ性が込められていました。

 映画を見て、何を思うのかは人によって違います。ただ、強烈な芯に裏付けされた作品は、人々の心に何かを訴えかけるパワーを持ちます。それがアニメーション技術の向上、新たな地平を生み出す一助になったことは間違いないでしょう。

 日本での巡回展は予定されていないようですが、2025年10月ではパリでの開催も決定しています。アニメという日本が誇る文化の素晴らしさと奥深さ、そして気の遠くなるような作業の数々味わえる展覧会。ぜひ、体感してみてください!

限定グッズやコラボメニューも! 後篇を読む

「高畑勲展 日本のアニメーションを作った男。」

会期 2025年6月27日(金)~9月15日(月・祝)
会場 麻布台ヒルズ ギャラリー 東京都虎ノ門5-8-1 麻布台ヒルズ ガーデンプラザA MB階
開館時間 10:00~20:00(最終入館19:30)※6月27日(金)~7月18日(金)の火曜・日曜は10:00~17:00(最終入館16:30)
主催 麻布台ヒルズ ギャラリー、NHK、NHKプロモーション
企画協力 スタジオジブリ
https://www.azabudai-hills.com/azabudaihillsgallery/sp/isaotakahata-ex

©東映
©TMS
©ZUIYO 「アルプスの少女ハイジ」公式HP http://www.heidi.ne.jp/
©NIPPON ANIMATION Co., LTD.
©NIPPON ANIMATION Co., LTD. “Anne of Green Gables” TM AGGLA
©はるき悦巳/家内工業舎・TMS
©オープロダクション
©野坂昭如/新潮社,1988
©1991 Hotaru Okamoto, Yuko Tone/Isao Takahata/Studio Ghibli, NH
©1994 Isao Takahata/Studio Ghibli, NH
©1999 Hisaichi Ishii/Isao Takahata/Studio Ghibli, NHD
©2013 Isao Takahata, Riko Sakaguchi/Studio Ghibli, NDHDMTK

次の話を読む「高畑勲展」で手に入れたい限定グッズ&カフェメニュー【完全ガイド】パパンダに抱きつける!? 夢の映えフォトスポットも!

2025.07.15(火)
文=宇野なおみ
撮影=末永裕樹