第96回アカデミー賞で長編アニメーション賞に輝いた『君たちはどう生きるか』。作品公開直後、鈴木敏夫プロデューサーは「宣伝なし」となった背景、キャラクターのモデル、そして制作中の「高畑勲の逝去」が作品へ与えた影響を明かしていた。受賞を記念してそのインタビューを再公開する。(初出:『週刊文春CINEMA』2023秋号/情報は当時のまま)

 異例の「宣伝なし」にも関わらず、大ヒットを達成。公開直後、スタジオジブリの鈴木敏夫プロデューサーに勝者の弁をうかがおうとした…ところ、話は今作の“裏側”からの見方へ。

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「宣伝しない」ことを選択したワケ

──公開前にお話をうかがったとき、「宣伝をしないのは博打」とおっしゃっていたので、「博打を当てた」感想をうかがいたいと思いまして…。

鈴木 当たりましたかね?(笑)

──これだけ話題にもなってますし、当たったでしょう(笑)。

鈴木 宮﨑作品の場合、ロングレンジなんですよ。初動が良くても9月以降にお客さんが来てくれるかは作品の力だと思いますし(註:ジブリ作品の公開はたいてい7月中旬)。ここから年末までどういう興行ができるかっていう…9月のシルバーウィークの数字が気になります。『千と千尋の神隠し』(01年)は、9月にお客さんに来ていただけたのが大きかったですしね。

──今作は観た人が解釈や感想を発信したくなるような内容でした。「宣伝しない」ことでかえってSNSで広まったわけですが、そこまで読んだ上でその方法を選ばれたんですか?

鈴木 まさか(笑)。何にも考えてないですよ。いろんな人が、話題に取り上げてくれればいいとは思ってましたけどね。

あのキャラクターのモデルは「鈴木さんじゃないよ!」って(笑)

──いろんな解釈が出てましたが、「青サギ/サギ男は鈴木敏夫だ」というのが目立ちました。鈴木さん自身、そうおっしゃってますけど。

鈴木 僕が言う前から、皆さんそう指摘してましたよねえ(笑)。…映画の中で、サギ男と眞人が話すシーンがあるじゃないですか。その感じが、僕と宮さんが喋ってる時と一緒なんですよ。話してる内容は違いますよ。でも、やり取りの雰囲気はまったく同じです。

2024.03.19(火)
出典元=『週刊文春CINEMA』2023秋号