この記事の連載
「高畑勲展」レポート【前篇】
「高畑勲展」レポート【後篇】
日本アニメが歩んできた道のりに思いを馳せて

会場に入ると、高畑勲監督の写真と年表が。第一章「出発点 アニメーション映画への情熱」では、キャリアのスタートから生涯を捧げたアニメへの思いに触れることができます。
その歴史はもはや、日本アニメーションの歩んできた道のりそのものと言い換えられるかもしれません。
実は高畑監督はアニメ『ドラえもん』にも関わっていたそうです。アニメ化について、直筆の企画書が置いてありました。
非常に精緻に『ドラえもん』の魅力を伝える文章は、説得力に溢れています。藤子・F・不二雄先生が許可を出すのも納得でした。

「絵を描かない」監督が、スタッフとやり取りするのに使ったのは主に言葉と文章。妥協を許さぬ苛烈な姿勢は生涯変わることがなかったようですが、良いものを作るためにと言葉を尽くしていたことが伝わる展示があちこちに登場しています。
第一章でフューチャーされている『太陽の王子 ホルスの大冒険』は、世界観が徹底して作り込まれています。キャラクターの感情の動きをグラフと香盤表で示した「テンション・チャート」など、作品世界を創り上げるとはここまでやる必要があるのか、と圧倒されます。
そして、アニメーションに関する展覧会だというのに、非常に文字率が高い! 内覧会でもぎりぎりまで近づき、資料に書かれた文章を読み込む人々があちこちに見られました。私もそのひとりです。
2025.07.15(火)
文=宇野なおみ
撮影=末永裕樹