10歳でパリ・ダカ超え! マルコの応援歌「草原のマルコ」に驚く

 「世界名作劇場」と言えば、「母をたずねて三千里」は避けて通れまい。オープニング映像でまず泣く。心許なく流れる雲、広い草原にぽつんと立つ幼いマルコは10歳の設定。その若さでたった一人、ブエノスアイレスに出稼ぎに行ったきり音信不通になった母親を追いかけるのだ。無鉄砲! しかもすれ違いが続き、放浪するハメになる。

 サントラにある、脚本を担当した深沢一夫さんのライナーノートによれば、原作「クオレ」ではたった数ページしかないこの話を、1年間というアニメの放送期間に合わせて膨らますため、様々なトラブルをガンガン追加。その結果マルコの旅は、なんとパリ・ダカールラリーを超える1万2000キロの過酷な旅となったそうだ(震)。いたいけなマルコ少年に難行苦行を課したアニメの制作陣は、マルコを応援する想いを乗せた主題歌、挿入歌と、応援団・ぺッピーノ一座の設定を思いついたという。

 作り手のマルコへの罪悪感と愛情が名曲を生む。なんと深い……。

なかにし礼作詞の「花のささやき」と謝らないラビニア「小公女セーラ」

 児童文学は、意外に残酷。それを教えてくれたのも「世界名作劇場」である。「あらいぐまラスカル」もなかなかだった。トウモロコシに夢中になり畑を荒らしまくるラスカルを見て「動物を甘く見てはいかん」と知った。

 しかしなんといっても、壮絶ないじめを描いた怪作「小公女セーラ」の上を行くものはない。意地でも謝らず「私、あなたさえよければ、仲良しになってあげてもよくってよ」と上から物申すいじめっ子ラビニアに、セーラが笑顔で握手する最終回はいまだに納得できない。そのモヤモヤ感も含めもう一度観たくなる私はドMなのか?

 この作品の重さを表現してあまりある主題歌「花のささやき」「ひまわり」は作詞・なかにし礼、作曲・森田公一という、昭和歌謡を盛り上げたベテランたちによって手掛けられていた。子どもにこびないテンション、お見事……!

もはや芸術!「オープニングをスキップ」できない「赤毛のアン」

 チビッ子の頃は、1を100に盛ってしゃべりまくるアンにいささか引き気味だった「赤毛のアン」。オープニングの「きこえるかしら」は、リズムのノリが難しく「ヘンな歌!」と思っていた。ところがどっこい、大人になって観て聴いてみると、アンが空中に浮かぶ馬車で四季の景色を潜り抜ける映像と絡み合い、バリバリ芸術。私は現在U-NEXTで観ているが、あまりの美しさに、時間がないときでも「オープニングをスキップ」のボタンが押せない! エンディング「さめない夢」も壮大なスケールなので、頭からお尻までガッツリ毎回観る! マシュウがアンに袖の膨らんだドレスをプレゼントする第27話・28話は声をあげて泣くレベルなので、今から配信を観に行くよという方、ハンカチを忘れずに……。

2025.07.14(月)
文=田中 稲