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山が変わるとその土地の作物にも変化が

――山本さんはなぜそんなに広い視野でものごとを見られているのでしょうか。山全体のことを考える視点は、どのようなところから生まれたのですか?

 農業をしていても、林業の方と関わる機会はほとんどありません。でもあるとき、印南町にある真妻地域のわさび農家さんとお話する機会があって。

 真妻にはこの地域発祥の「真妻わさび」というブランドわさびがあるのですが、今ではほとんど静岡県で栽培されていて、この地域には1軒しか農家さんが残っていないんです。

 もっと育てたらいいのに、と言ったら、山が変わって貯水力がなくなってしまったからできないのだと。大雨が降ると、土砂災害につながってしまってわさびは流れてしまうし、日照りが続いたら畑が枯渇してしまう。わさびって、ちゃんと水が流れ続けることが大切なんですね。

 昔は育てられていた場所でも作れなくなってしまったと聞いたとき、それまでは梅農家として農業のことしか見ていなかったのですが、山を大切にすることもしていきたいなと思うようになりました。

 それがひいては、梅栽培にもつながっていくのだと考えています。

2025.07.11(金)
文=吉川愛歩
写真提供=うめひかり