ちなみに、佐藤友美は1980年代に“金妻女優”として注目された人。新興住宅街における人妻たちのきわどい恋愛模様を描いたTVドラマ「金曜日の妻たちへ」シリーズは大ヒットし、社会現象になった。いしだあゆみや篠ひろ子といった面々が、当時の現役世代の憧れの的となったのだ。今起こっているのは、まさにその世代の恋愛復活現象と考えてほしい。

カッコいいか、カワイイか、二者択一のポストメノポーズ・ファッション

 女性に年齢を聞くことはタブー? この議論は形を変えつつ、今もぼんやり続く暗黙の了解の一つだが、そうなった理由の一つは、閉経しているか否か?を聞いてしまうタブーに抵触するから。

 ただ女優は敬称の代わりに年齢を記される慣習からそれを隠せない仕組みになっていることもあり、気がつけば70代であれ80代であれ、自らの年齢をなんの躊躇もなく語り、閉経も隠さない。となれば、女性全般の年齢ももはや伏せるべきものではなくなるのだろう。

 それ以上に”高齢”は今や重要な売りになる時代。奇跡の〇歳という既に聞き飽きたフレーズも、その人だけの魅力が際立てば何回でも奇跡は起き、50代より60代、さらに70代80代へと、奇跡のボルテージは上がるばかり。ただし、若く見えるだけの奇跡はもう成立しない。じつは一つの鍵となるのが、髪型も含めたファッションであり、そこには明快な法則が浮かび上がってくる。

 まず、ポストメノポーズ世代はガッツリお洒落をすべき。派手なくらいで、ちょうどいい。地味がもはやシックには見えない年齢だから地味にする意味がない。お洒落が自分を高揚させるものなら尚更、派手なくらいでないと、少なくとも精神的なアンチエイジングにはならないからなのだ。

 ただ、ポストメノポーズ世代のファッションは難しい。その世代らしさを考える必要など全くないし、1%も年寄りくさく見えてはいけないが、若作りも不自然。逆に年齢を考えさせないために、明確な形容詞が必要になってくる。

 それが、カッコいいか、カワイイか。クールかキュートか、どちらかに思い切って振り切ると、不思議と野暮ったくならないし、危うくもならない。この世代がお洒落するほどに増えてくる貫禄や太々しさも生まれない。それも変に色気を混ぜないのがポイントで、だからどちらも清潔感を保ったまま、存在感を際立たせることができるのだ。

 具体的なお手本としてはクール派なら、文句なく夏木マリ。キュート派なら、今や大人世代のカリスマとなっている柏木由紀子。ちなみにカワイイと言っても、若作りなカワイさではなく、何かお嬢さんぽさが残るコンサバや爽やかなカジュアルが決め手となる。

 海外に目を向けても、そもそも歳を重ねて再注目される人は、カッコいいか、カワイイか。クール派はイーロン・マスクの母、メイ・マスクやヘレン・ミレン(ミレンはドピンクのドレスなど、キュートなお洒落もお上手)。キュート派は、フレンチトラッドがあまりにも小意気なダイアン・キートン。どちらにせよ、ポストメノポーズ世代は暑苦しくない涼やかで軽やかな派手を心がけよう。元気のために。

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齋藤薫 美容ジャーナリスト
女性誌編集者を経て美容ジャーナリスト/エッセイストに。女性誌において多数のエッセイ連載をもつほか、美容記事の企画、化粧品の開発・アドバイザーなど幅広く活躍。著書に『美人だけが知っている100の秘密』など。

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2025.07.11(金)
文=齋藤 薫