女性にとって、閉経後=「ポストメノポーズ」の期間は、制約から解放されより自由に、自分らしく生きることのできる人生のゴールデンタイムではないか。そう思わせてくれる、現代の“ポストメノポーザルウーマン”の活躍と輝きを考察する。齋藤薫さんのエッセイの一部を『週刊文春WOMAN2025夏号』より紹介します。

もう一花! どころか、ポストメノポーズの方が恋愛はうまくいく?

 昨今、状況が大きく変わったのが、高齢者の恋愛事情。出会いを求めるサークルも、50代60代を対象にした催しは大盛況。あっという間に予約が埋まり、キャンセル待ち多数。出会い系サイトはもちろん、マッチングアプリ的なものは、大人ほど警戒しがちだし、立食お見合いパーティーは何か物欲しそうで都合が悪いが、着席のお食事会形式の出会いの場は、今一大ブームと言ってもいい。

 料理を楽しんだり、一つのテーマで会話したりという大義名分があるからだろうが、男女比20対20のような同数設定で、既婚者は申し込みできないなど、結局のところ明快なパートナー探し。しかも今、70代以上OKのお食事会への要望が引きも切らないという。

 こうした傾向も、更年期以降の男女が変貌したことを示している。ズバリ言えばまだ何も終わっていない。恋愛もしたいし、できれば結婚もしたい……。それは女として男として、まだ充分自信がある証。実際その年齢になってみたら、自分は何も衰えていないのを実感している人が増えたことをまざまざと示している。

 そこには、自分たちがまさに更年期に差し掛かってから、突然「人生が100年になりました!」と言われて、「そんな長いならば、もう一度」という数字的な計算もあったはずだが、それ以上に、今の50代60代70代の男女は、多分どの年代よりも自分が優れているという自負が強いからではないかと思われる。

 今、70代中盤から後半になった団塊の世代は、自己表現の自由と衝動に駆られて人生を生きてきた最初の世代。まだまだ終わっちゃいられないという人生への自己顕示欲が強い人々だ。そして今の50代60代はバブルを体験し、仕事も遊びも濃厚にこなしてきた人たちだけに、どこかまだ欲求不満。今こそ自分の魅力を本当に理解してくれる人に出会えるかもしれないとの希望に燃えている気がしてならないのだ。

 だから「老いらくの恋」はもはや死語。これからは「2度目の恋」どころかこれぞ本番と思えるような真の恋愛に目覚める世代として激しく活動を始めるのだろう。この世代の恋愛を指南したとも言える“小説家”岸惠子や、メディアに再登場して再び憧れの的となりつつある佐藤友美が、80代90代にして未だ驚くべき美しさを保つことが、またこの傾向に拍車をかけそうである。

2025.07.11(金)
文=齋藤 薫