自称超能力者からの誘い
毎日のように怪しいお誘いを相手にしているうちに耐性ができたようで、いまではピシャッとした対応をしてくれている。電話に出てくれたママの対応を聞いたことがあるけど、じつに頼もしかった。
「はい、梅宮です。うちのアンナはね、病院一本でやってるんで、そういうのまったく必要ないです!」
「ちゃんと断ってる。ママ、すご~い!」
「もう、大丈夫よ」
「なんの誘いだった? 免疫? サプリ? お水?」
「超能力だって」

ママがピシャッとした対応をしていることに驚いたけど、「超能力でどうこう」なんてものまで出てくることにもっと驚いた。
「超能力?」
「超能力でアンナががんになった原因がわかるんだって」
「じゃあ、電話はエスパーからだったの? ほんとにエスパーなら、テレパシーで私に直接教えてくれればいいじゃない」
「そうよね、電話なんていらないわよね」
力が抜けて、ヘナヘナとソファに座り込んでしまった。自称超能力者からがんになった原因を聞いたところでどうしようもない。そりゃあ、原因がわかるものなら知っておきたい。でも、どうせ教えてもらえるのならば、私は超能力者よりもがんセンターの先生から教えてもらいたい。
がんになってから増えた新種のストレス
「一番いいのは、ストレスをためないこと。楽しいこと、笑えることをやられたらいいと思います」
先生からはこうも言われたけど、「この地球上に生きていて、ストレスを感じないのは、さすがにムリなのでは?」と思いながら聞いていた。これに関しては私の大当たりで、がんになってから新種のストレスが増えた。そのほとんどが「あれをやっちゃダメ」「これしたらいけない」というアドバイスだ。
「髪の毛、金髪にしてたでしょ? だから、がんになったんだよ」
「お豆腐を食べてれば、がん細胞なんて消えていくから」
「インスタを見てると、外食が多いですよね。原因は食生活じゃないですか?」
髪の色でがんになって、豆腐でがんが治る。がんって病気は、そんなに簡単なものなの? どんな髪の色だったらがんにならないの?
さらに、がんサバイバーの方々からも治療法についてコメントがくることがある。
「一般的に抗がん剤投与は3週間に1回なんですけど、私の場合は2週間に1回なんです」とインスタに書いたら、「いや、私は1週間に1回なんですけど」と返ってきた。こっちは「え? なんか、すいません……」とシュンとしてしまった。

写真=鈴木七絵/文藝春秋
〈「余命3ヶ月から生還しました」と事務所に手紙が…がん闘病中の梅宮アンナ(52)が明かす、がんになって掛けられた言葉〉へ続く

2025.07.09(水)
文=平田裕介