私にとってベストな選択は

 みんな、それぞれのステージに置かれていて、ステージによって治療に対する捉え方も変わっていくはず。「あと3ヶ月ですよ」なんて宣告されたら、「ちょっと免疫治療をやってみようかな」となってしまうだろう。実際に免疫治療で助かっている人もいるだろうから、「なにが間違い」「なにが正しい」とも言い切れない。

 パパが50年前に睾丸がんになって肺に転移したとき、「専門医の言葉に説得力があった」といって標準治療をメインにしている。そこは娘だからなのか、パパの闘病を見たり、ママから聞いてきたからなのか、私も説得力を感じられるものしか信じられない。

 ママも百々果(娘)も、私と同じスタンス。標準治療を選んで迷いはなかったけど、ママと百々果に聞いたことがある。

「もしも、私が免疫療法とか自然療法だけで治療することにしたらどうする?」

「イヤよね」

「いやいや、標準治療でしょ」

 ママも百々果も即答。そう答えてくれて、改めてベストな選択だったんだと思った。

お金の面でも身の丈にあっていた標準治療

 また、標準治療はお金の面でも身の丈にあっていた。自由診療は、とにかくお金がかかってしかたがない。免疫治療には、がん患者の免疫細胞を取り出して増殖・活性化させて体内に戻す免疫細胞治療やビタミンCを静脈投与する高濃度ビタミンC点滴などがあるけど、その費用の相場は1クールで300万円、400万円が当たり前らしい。

 標準治療ならば、エビデンスがあるうえに、国民健康保険が利いて3割負担になるから、数百万円の手術が数十万で受けられる。そこを考えても、私には標準治療しかなかった。

 それに私のまわりにいるがんサバイバーの方々すべてが、標準治療を選択している。社会復帰して元気に働いていたり、もりもり食べている姿を見ているから、どうしたって説得力がある。

 自由診療や民間療法も、標準治療とは違った趣の説得力みたいなものが背景にあるから、信用したり、頼る人がいるのだろう。

写真=鈴木七絵/文藝春秋

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2025.07.08(火)
文=平田裕介