オリジナル版とはまったく異なる後味に

 映画の前半はライトかつコミカルな作風で、ヨンイルたち設計者の面々が織りなす軽快なアンサンブルも見どころのひとつ。ヨソプ監督は俳優陣の日常会話に耳を傾け、脚本のセリフに活かしていった。

「この映画では、台本の読み合わせを何度もするよりも、彼らが普段どんな話をしていて、どんな言葉遣いやスタイルでしゃべるのかを私がキャッチするほうが重要でした。それは掛け合いの場面だけでなく、人物が葛藤するシーンでも同じこと。全員で殺人計画を立てるシーンではカメラのセッティングもシンプルにしました。いつもと変わらない空気で会話してもらいたかったんです」

 ところが、すべては計画の破綻とともにあっけなく崩れはじめる。誰かが“設計”を破壊したのではないか、裏切り者がいるのではないかという疑念が事態を悪化させていくのだ。まさに予測不能、結末まで一瞬たりとも気が抜けない展開が続く。

 映画の結末は、オリジナル版とはまったく異なる後味を残す。監督が「ラストシーンを撮りたくてこの映画を作ったと言ってもいいくらい」と語るほどの入魂のアイデアだ。

「皆さんには、ヨンイルと同じ気持ちになってほしかったんです。観た人の脳内で、もうひとつのアクシデント(事故)が起きる結末にしたかった」

『プロット 殺人設計者』

 

6月20日(金)より新宿バルト9ほか全国公開
配給:クロックワークス
監督・脚本:イ・ヨソプ
出演:カン・ドンウォン、イ・ミスク、イ・ヒョヌク、チョン・ウンチェ、タン・ジュンサン/イ・ジョンソク
2024年/韓国/5.1ch/シネマスコープ/韓国語/ 99分/ 原題:설계자/英題:THE PLOT/字幕翻訳:石井絹香/配給:クロックワークス/G 
公式サイト:https://klockworx.com/movies/plot
 © 2024 NEXT ENTERTAINMENT WORLD & ZIP CINEMA. All Rights Reserved.

2025.06.28(土)
文=稲垣貴俊