坂本美雨は透明感のある歌声を披露

 坂本美雨は“イエロー・マジック・チルドレン”でも歌った「音楽」を透明感のある歌声で披露。“イエロー・マジック・チルドレン”ではまだ幼かった愛娘がリハーサルのときに歌に合わせてピアノに登って踊っていたのが印象に残るが、その愛娘も最近のインタビューによるとすっかりお姉さんになっているらしい。時が経つのは早いが、3歳の坂本美雨のために書いたこの曲を、その対象となった本人が42年後もこうして歌い継いでいる。

 続く「パースペクティヴ」も坂本龍一楽曲。この曲は坂本作品だが、かつて高橋幸宏とゴンドウトモヒコが組んでカヴァーしたことがある。坂本龍一の還暦祝いのレコーディングだった。ゴンドウトモヒコのホーンやアレンジにその高橋幸宏ヴァージョンの名残も感じさせ、いま世にいないYMOのふたりにこの演奏と歌を聴いてほしかったなと思う。

ジンジャー・ルートと小山田圭吾が共演

 そして登場したのがアメリカからやってきたジンジャー・ルート。最近の来日公演でも尋常ではないYMOリスペクトを発揮してきた彼だけにその熱量はすさまじい。かつてYMOがアメリカのリスナーを強く意識してレコーディングしたアーチー・ベル&ザ・ドレルズのカヴァー曲「タイトゥン・アップ」をアメリカ人のジンジャー・ルートが日本のリスナーに向けて歌っている。ファンキーなギターとファンキーなリズム。それに乗って「ジャパニーズ・ジェントルメン! スタンダップ・プリーズ!」と煽りまくるのだから、観客もついに我慢できなくなっていっせいに立ち上がって踊り出す。この瞬間がこのコンサートのハイライトだと感じた人も少なくないだろう。

「タイトゥン・アップ」に続き、こちらもアメリカのダンス・チャートで人気だったYMO結成のきっかけとなったマーティン・デニーのカヴァー「ファイアークラッカー」だ。ギターで小山田圭吾も参加する。

 ジンジャー・ルートがステージを去ると小山田圭吾が2009年のワールド・ハピネスでのYMOとの共演を思い出させるような過激なギターを響かせる「千のナイフ」、そしてコーネリアスとしてカヴァーも発表している「キュー」と続いた。コーネリアスのカヴァーでのアレンジと2000年代のYMOのライヴ・アレンジが一体となったすばらしい演奏だった。

2025.06.27(金)
文=吉村栄一