まず最初は東京スカパラダイスオーケストラのホーン・セクションであるトランペットのNARGO、トロンボーンの北原雅彦、テナー・サックスのGAMO、バリトン・サックスの谷中敦。「コズミック・サーフィン」「シムーン」の細野作品2曲を演奏した。スカパラは高橋幸宏とのコラボレーション作もあるほか、2010年に高橋幸宏がキュレーターだった音楽フェス“ワールド・ハピネス”でYMOのステージにもゲスト参加した。YMOの楽曲の盛り上げどころをよく知っており、オリジナルに忠実なアレンジの「シムーン」はその抒情性を際立たせる演奏だった。高田漣のヴォーカルも、さすが長く細野晴臣バンドにいただけに味がある。

サカナクションの山口一郎も「過激な淑女」を熱唱
そしてサカナクションの山口一郎。サカナクションも2010年、2011年のワールド・ハピネスに出演しており、その際には自分たちの楽曲にYMO作品のフレーズを取り入れるなど、かねてからYMOへのリスペクトを表に出しているアーティストだ。
その山口は中森明菜に提供する予定だった1983年のYMO歌謡曲の代表、「過激な淑女」をまず熱唱。YMOがテレビ出演時に披露したアイドルのパロディ的な大仰な振りを彷彿とさせるアクションで妖しく、華麗に同曲を歌い上げた。同じく1983年に発表された「以心電信」。この曲は21世紀に復活したYMOが原曲を大胆に改変して披露していたが、このときはその21世紀版アレンジとオリジナルのアレンジがマッシュ・アップされたかのような演奏でおもしろかった。

“岡村ちゃん”らしいキレのあるダンスとともに熱唱
ひときわ高い歓声で迎えられたのが岡村靖幸。岡村も2012年のワールド・ハピネスに出演したほか坂本龍一とのコラボレーション作品もあり、以前からYMOのメンバーとのかかわりは深い。ここでは細野作品であるYMO随一のファンク・ナンバー「ザ・マッドメン」を“岡村ちゃん”らしいキレのあるダンスとともに熱唱。この京都国際会館のホールは国際会議のための空間で、フロア席にはテーブルが付いていたりする。なので、禁止されているわけではないが立ち上がったり、踊ったりすることがはばかられる雰囲気がある。ダンサブルな「ザ・マッドメン」を座ったまま聴くというのはもどかしいが、1980年代のYMOのアリーナ公演での着座のままみなおとなしく聴いていたあの頃の様子が脳裏に浮かんだりもする。

さらに「君に、胸キュン。」というYMOの後期を代表するヒット曲で、キュートなアイドルを演じた3人のおじさんの姿が浮かぶ。岡村も両手でハート・マークを作りながら歌うなど楽しいひとときとなった。
2025.06.27(金)
文=吉村栄一