正反対の2人が絆を深める

 フランス帰りで、自由奔放・エネルギッシュに生きるジェヒは、世間のルールに縛られず、恋愛と夜遊びを全力で楽しんでいる。そのため、「ルール」「普通」を重視する大学のクラスメイトからは距離を置かれ、友達がひとりもいない。

 一方、ゲイであるフンスは“普通ではない”自分を周囲に隠しながら、孤独な日々を送っている。

 そんな正反対のふたりが出会い、自分軸を大事に生きている互いを認め合い、絆を深めていく。

お互いに心を開ける、尊い関係性

 性的に「対象外」同士のジェヒとフンスは、誰にも見せなかった素の自分を見せ合い、心を通わせていくなかで、「誰に理解されなくても、お互いがわかっていればいい」と相手をまるごと受け入れるようになる。

 恋愛ではなく、友情とも違うふたりの関係性は、むしろ恋人より友達より尊いものに見える。

 ふたりにはこれまで、「ありのまま」の彼らを受け入れてくれる人がいなかったのだろう。だからこそ、自分の価値観を大事にしてくれるお互いに心を開いていくのだが、そもそも“人と違う”“普通ではない”ことがなぜいけないのか、疑問を抱く。

ふたりが抱える苦しみ

 ふたりの人生は決して平坦ではない。

 自由を謳歌しているように見えるジェヒは、奔放さゆえに恋愛で失敗も繰り返す。何にも縛られていないように見えて、ジェヒは「誰かに愛される自分」にしか自分の価値を見いだせないため、恋愛で傷つくたびに自己否定に陥ってしまう。

 またフンスは、自分がゲイであることを母親にカミングアウトできず、苦しみを抱えている。母は息子のセクシュアリティを「病気」と思い込み、祈ることで“普通”に治そうとしているが、こうした母の期待と無理解にフンスは押しつぶされそうになっている。

2025.06.24(火)
文=相澤洋美