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【相談】「あなたはいつも正しいから」という言葉が耳から離れません

私は、受験も就職も結婚も、希望通りに叶いました。ある日、友人から相談を受け、その悩みに自分なりに回答したら、返されたのが右の一言。友人曰く、「人生の勝ち組の正論」だそう。途端に自分がつまらなく、面白みのない人間に思えてきました。数年経つ現在も、その言葉がいつも頭の片隅にあり、自分が人生において選び取ったもの、これから選ぶものは、ただの無機質な「正論」なのかと、虚しくなります。(28歳・女性)

近田 この人はさあ、令和の白樺派だよね(笑)。有島武郎とか武者小路実篤みたい。そんなに深刻に人生をとらえることはないよ。

浅野 自分が幸せであることを、周りの人たちが妬んでると思い込んじゃうんだろうね。

近田 せっかく恵まれた人生を送ってるんだから、他人の言葉に惑わされる必要なんてないのに。

浅野 自分の境遇を、手放しで喜んじゃえばいい。人は、それほど他人のこと気にしちゃいないよ。

近田 僕の座右の銘の一つが、「適当かついい加減」なのよ。

浅野 無責任でOKってこと?

近田 違うのよ。「適当」も「いい加減」も、本来は、ちょうどいい具合って意味じゃない?

浅野 ああ、確かにそうね。

近田 でも、傍から聞くと、大雑把で粗略だととらえられるのが面白いなと思って。まあ、言葉遊びみたいなもんなんだけどさ。

浅野 なるほどね。

近田 だから、この女性もさ、自分の考え方を、「正論」じゃなく「適当かついい加減」と言い換えてみると、ちょっと気が楽になるんじゃないかな(笑)。

2025.06.08(日)
文=下井草 秀
写真=平松市聖

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※この記事のデータは雑誌発売時のものであり、現在では異なる場合があります。

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