神戸の市街地で、東西数十キロにわたって緑の背景のように続くのが、六甲山。六甲山といってもひとつの山ではなくて大小の山を含む山系で、最高峰は931メートル。その登山口にあたる灘区の六甲は、住宅街であり学生街でもあります。
そんな街に、ガレットとクレープの専門店『ル・マロン』がオープンしたのは2013年5月。フランスが大好きな白石さんが始めた、坂道の途中のかわいいお店です。
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ガレットは、フランス・ブルターニュ地方の郷土料理。そば粉と塩を水で溶いた生地を寝かせて薄く焼いたもので、クレープも元々はガレットから生まれたのだそう。そば粉が小麦粉になり、卵や牛乳、バター、砂糖などが使われてリッチな味わいになったクレープの方が、日本ではおなじみ。ガレットの専門店はまだまだ少ないようです。
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右:キュートな店内。
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「フランスに行った時、お金があまりなくて、安いガレットやクレープを食べたら、とてもおいしかったんです」と、白石さん。人気のお店ではクレープを食べるためにたくさんの人が並んでいる姿もまのあたりにして感激したと言います。家でもガレットやクレープを焼いて食べていたのだそう。
「フランスが大好きで、何かフランスに関わるようなことがやりたかったんです」。
フランスでどこにでもあるクレープリーそのままの形でやりたいと、店を始める前の年末に渡仏。現地の味をしっかりと確認して、開店まで試行錯誤を繰り返しました。
「ガレットもクレープもどちらも好きだから、欲張って両方を出そうと思って」。
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母親でもある白石さんは「食べること、食べるものは、とても大切だと思うんです」と、使用する食材にこだわりました。ガレットのそば粉もクレープの小麦粉も、国産の無農薬有機栽培のもの。どちらも農家からひき立てを直送してもらっているそう。「ひき立ては香りが違います。特に、そば粉は格別」。
おいしさと安心の元は、ベースとなる粉の違いなのでした。すべての食材にこだわりたいところですが「そうすると、ひとつの値段が高価になってしまう。おやつや軽食があまりに高額では悲しいですよね」と、可能な限りということに。
2014.06.08(日)
文・撮影=そおだよおこ