新たなドジっ子ヒロインを誕生させた、丸山礼の実力

 これまでのドジっ子ヒロインの活躍のフィールドは、主にラブコメでした。本作はラブコメではありませんが、「コメディ」としての見応えは十分。それを支えているのが、主演の丸山礼。シーズン1はいきり主演の大抜擢に驚きましたが、これが大正解! ロバートの秋山竜次や土屋太鳳など、さまざまな人のものまねで魅せる高い模倣能力が持ち味なだけあり、網浜さんという強いキャラを見事インストールできています。

 もちろん本人の明るさやユーモア、キャクター性も、網浜さんを演じる上でかなり生かされています。アドリブシーンが多めに用意されていることも、本作ではプラスに機能。ドラマとシチュエーションコントの中間のような不思議なつくりが成立しているのは、ひとえに丸山礼のお笑い力と演技力のたまものと言っていいでしょう。つまり、「主演・丸山礼」でなければこのドラマは成立しなかったということです。

 「ふつう」の社会から逸脱していることを意地悪に笑うのではなく、網浜さんの豪快さを前に押し出し、ギャグに昇華するストーリーは、社会や人間への皮肉として受け取ることもできます。

  シーズン2の教師編では、『GTO』の鬼塚英吉ばりの破天荒さを発揮。自分ファーストな言動が結局生徒の心を救うことになる展開に、「え、鬼塚もある意味ドジっ子ヒロインだったんじゃん……」という気づきを得ました。

 網浜さんの傍若無人な振る舞いは「またやってるよ(笑)」という視聴者の期待に応え、ある種の様式美的なおもしろさを感じさせます。それが毎日15分というフォーマットにもハマり、元気や明日への活力をくれる夜ドラになっているんです。そして、まだまだ「事件」は起きそう。最高か!

 番組の最後にはいつも「網浜奈美を好きになるまであと◯日」というカウントダウンテロップが表示されます。それは「こんな女性らしくない無礼なサバサバ女、みなさんお嫌いでしょう?」という前提のもとです。かつてのコントバラエティでは男性芸人がよく女装して演じ、小バカにする対象にもなっていた女性キャラクター像なので、そう仕掛けたいのもわかります。でも時代は進んだ。言わせてください。網浜さん、そのキャラ、最初からずっと好きです!

夜ドラ『ワタシってサバサバしてるから2』(NHK総合)

毎週月曜~木曜 よる10時45分~11時(各回15分)

2025.05.26(月)
文=綿貫大介
写真=NHK