なぜ網浜さんはあんなに世渡り上手なのか?
出版社から大手アパレル企業に(内情は出版社からはクビを言い渡され自主退職、派遣社員としてアパレル企業へ潜り込む)、そして政治家にチャレンジし落選、シーズン2の現在は高校教師になった網浜さん。ただ、ここで一つの疑問が生じます。「なぜ、あれほど仕事ができないのに、網浜奈美はあんなにもたくましく、そして世渡り上手なのだろうか?」と。
その驚異的なサバイバル能力の源泉が、圧倒的な自己肯定感です。基本的に「自分は正しい」「自分は魅力的」「自分はデキる」という絶対的な自信を持っています。他人からの批判や仕事での失敗も、網浜さんにとってはどこ吹く風。「周りがワタシのレベルに達していないだけ」「時代がワタシに追いついていない」と、驚くほどポジティブに、そして都合よく変換できてしまうのです。この鋼のメンタルが、彼女の不屈の精神を支えています。そしてそういう人に運は味方します。

また、口ぐせである「ワタシってサバサバしてるから」というフレーズ。この一言で、自身のどんなに失礼で自己中心的な言動も「裏表がないサバサバした性格だから仕方ない」と、周囲に無理やり納得させてしまうのです(実際はネチネチしている部分もあるのに!)。
これ、自己ブランディングが完璧に成功しているんです。周囲の人々はこれにより「網浜さんはそういう人だから」と、ある種の諦観の境地に達します。その中で「網浜奈美との適切な距離の取り方」や「対処法」といった暗黙のルールが形成され、結果として彼女が組織の中で浮きながらも存在し続けられる、という不思議なバランスが生まれるのです。
これ、「どの職場もそうであれ!」と思いませんか? だって、人ってみんな違って当たり前だから。画一化した「ふつう」な人が集まるのではなく、いろんな違う強みを持った人が集まることで、組織は強くなるんです。
もちろん、網浜さんの行動を全肯定するわけにはいきません。ルールやマナーを無視した自分勝手な行動がすぎると、孤立を生むことだってある。でも、網浜さんは仕事のスキルとは別の次元で、自分自身の価値を疑わず、どんな状況でも自分らしく生き抜こうとし続けます。
2025.05.26(月)
文=綿貫大介
写真=NHK