デミ・ムーアが体現してきた「自分で自分を変えていく強さ」

「そこで問題を見つめ直せれば、強くなれる。(世間や他人は変えられなくても)自分がしてることなら自力で変えられるから」とデミは語る。自分で自分を変えていく強さ。それこそ、デミ・ムーアが体現してきたものだ。

 振り返ってみれば、デミの激動の人生は、同時に映画業界にとどまらない影響を残してきた。当時スキャンダラスとされた妊婦ヌードは「包み隠されるべき神聖なもの」として扱われてきた妊娠中の女性のイメージをもっと自由にした。ギャラ交渉は、男女平等賃金運動の先駆けだった。そして、皺やたるみを隠さず挑んだ『サブスタンス』では、見過ごされがちな自身に対する精神的暴力を描き出した。

 アカデミー主演女優賞には惜しくも届かなかったが、授賞式前に長女ルーマーが贈った賛辞こそ、デミ・ムーアの功績を物語っている。

「母は決して、楽な道を選んできませんでした。限界を押し広げ、想像を裏切り、何度だって女性たちのために道を切り拓いてきたのです。今もなお、最前線で証明してくれています。人間の偉大さとは、才能にかぎらず──情熱や忍耐、自分を信じる力によって築かれるのだと」

『サブスタンス』5月16日(金)公開

■監督・脚本:コラリー・ファルジャ(『REVENGE リベンジ』)
■出演:デミ・ムーア、マーガレット・クアリー、デニス・クエイド
イギリス・フランス/142分/R-15+ 配給:ギャガ
©2024 UNIVERSAL STUDIOS

2025.05.17(土)
文=辰巳JUNK