――ファン層が180度変わったのは、空気として感じましたか。

浅野 感じました。やっぱり『抱きしめたい』効果が大きくて、ファッションブックという写真集を出させていただきサイン会をしたらお客さまが女性しかいませんでした(笑)。握手をして泣いてくださったり。同じ女性に好きといっていただけることが、こんなにも嬉しいことなんだと、とても大きなプレゼントをいただいた気持ちになりました。

――逆に、男性ファンは去っていった?

浅野 20歳前後は水着や露出の多いものを着るセクシー路線を走っていましたので、男性ファンばかりでしたが、俳優として仕事がドラマに移っていって女性としての色気を感じられなくなっちゃったのかもしれませんね(笑)。まぁもともと色っぽくはなかったんですけど(笑)。作家の林真理子先生が「普通、仕事を続けていくと、だんだん洋服を脱いでいく。洋服を着込んでいって、売れたのは珍しい」とおっしゃってくださったこと、とても嬉しかったです。

――本当はウェットなのに物わかりのいい風を装うことが「自称サバサバ」と揶揄された時期もありましたが、今は弱音や愚痴をそのまま出していこうという雰囲気ですよね。

浅野 「日本人はNOが言えない」と昔から言われてきましたが、嫌な思いを抱えたことが重荷になって精神的に疲れてしまうのであれば、これは嫌ですと言えちゃうのは良いことだと思いますね。

――浅野さんご自身はNOが言えるほうでしたか。

浅野 一度若い頃に、ドラマの衣装合わせで「私はこれは着られない」と言ったことがあるんです。そうしたら演出家の方に「たしかに浅野ゆう子はこの服は着ないよね。でもこの役の人は着るんだよ」と言われて、確かに! と納得したことがあります。キャラクターのイメージをプロの方が相談して持ってきてくださった。それ以来、理由が納得できたらNOは言わないようにしようと決めました。

親しい人からの「本当に遠慮しぃだよね」「もう少し女性らしくしたら?」

――プライベートではいかがですか。

浅野 プライベートの方がどうしても気を遣っちゃいます。友人にご飯に誘われて、疲れて乗り気じゃない時も断れなかったり。友人に会いたい気持ちが勝ってしまうのもありますけど、「本当に遠慮しぃだよね」とよく言われます。

――それは旦那様にも同じですか?

浅野 夫には「もう少し女性らしくしたら?」と言われることが多いので、あまり遠慮もウェットさもないかもしれませんね。もしかすると友人に対してが、一番ウェットかもしれません。

――ドラマで演じる結婚相談所の社長さんもかなりキツイ結婚観ですよね。

浅野 顔は良いに越したことはないけど大事なのは外見ではない、かといってお金でもない、愛情があればそれで良いんだ、と。

――ということはいま結婚の相談を受けたら、そのアドバイスを採用しそうですか?

浅野 します……と言いたいところですけど、結婚の相談は私じゃない人にしたほうがいいんじゃないかなと思います。だって私が結婚したのは57歳の時ですから、もうちょっと早く決めた人に聞いた方が良いと思います(笑)。

「1人で生きていく気満々」だった浅野ゆう子が57歳で結婚した意外な理由と、「もうちょっと女性らしくしよう」と言われた時の“無理しない”対処法とは〉へ続く

2025.05.10(土)
文=田幸和歌子