近年の晩婚化や未婚率上昇の影響を受けてか、恋愛がテーマに扱われるドラマでも、もはや主演は20代であることの方が珍しく、30代が中心となっているが、そんな中でアラフィフ女優が恋愛ドラマのセンターに配役されることも増えている。

麻生久美子が“禁断の恋”に溺れる弁護士を熱演

 4月18日に始まった金曜ナイトドラマ『魔物』(テレビ朝日系)もそんな作品の一つで、ヒロインに麻生久美子を起用し、第1話から何やら危なげな色香漂っていた。

 本作は韓国ドラマ『梨泰院クラス』(2020年)を手がけたスタジオ・SLLとテレビ朝日による日韓共同制作の完全オリジナルラブサスペンスドラマで、麻生演じる主人公の弁護士が、年下の危険な魅力溢れる被告人と出会ったことをきっかけに、さまざまな意味で人生を狂わせられていくというストーリー。

 麻生演じる弁護士のあやめは、男性からのDV被害に悩みながらもそこから逃れられない女性を救済する活動に熱心に取り組んでいる。一方で、自立した自身への自負があるからか、男性に縋るしかない同性をどこか自分とは違う生き物で“救い出すべき対象”と認識している節も見え隠れする。

 落ち着いたトーンから繰り出される堂々とした物言いで「そこからすぐに離れなさい」と諭す麻生には一切の綻びも隙もなく、「難攻不落」、「完全無欠」という言葉を地でいく。その一方で、全てを比較的思い通りに理性的に制御してこられた強者の空論にも聞こえる。

 そんな麻生が第1話ラスト、法廷に弁護士としてではなく被告人として立つなんて誰が想像しただろうか。塩野瑛久が演じる被告人・凍也との出会いによって彼女の中で封じ込められていた、諦めかけていた何かが目を覚ましたのだろうか。本作内では激しいラブシーンも描かれるようで、これからますます目が離せなくなりそうだ。

 麻生は『あのときキスしておけば』(テレビ朝日系)でも、松坂桃李演じる年下男性と恋に落ちる売れっ子漫画家・唯月巴役を好演。これまた仕事でも大成功していて、それでいてとんでもなく茶目っ気があり、年下男性を揶揄いながらも彼の純粋な想いに救われ、いつの間にか惹かれていくという役どころだった。

2025.05.02(金)
文=佳香(かこ)