齋藤薫さんが美容の移り変わりから世相を読む「ビューティー的知見」『週刊文春WOMAN2024夏号』に掲載された、「90年代は良くも悪くも日本の女をオトナにした?!」の一部を抜粋の上、ご紹介します。

1.90年代は、史上初日本だけのトレンド、太眉とトサカ前髪で始まった!

 あれは一体何だったのか。90年代の入口、閃光の如く始まって終わったバブルの象徴、ジュリアナのお立ち台の上で揺れるトサカ前髪。それは80年代後半に始まる景気の狂乱がもたらしたアダ花に他ならず、成功の妄想に酔った男たちがその証としてトロフィー女子を求める構図がそこにはあった。

 なぜか皆自信満々、私こそあなたが求めるトロフィー女子とばかりに、お立ち台やハイヒールでは足らず、前髪をトサカの様におっ立てて、女王様目線で世の中を見下ろしたのだ。どんな時代も、地位を誇示したい者は頭が高くなる。

 80年代は「女の時代」と持て囃されたのがエスカレートした形で太眉もセット。とは言え、わずか3年でジュリアナ閉店。パワーを持て余す90年代女子の声は、清水ちなみのOL委員会などにまざまざ残されることになる。

 

2.バブル崩壊で国力低下? スーパーモデル文化が怒涛の襲来

 70年代は外国人コンプレックスが強かった日本人も『ジャパンアズNo.1』がベストセラーになって一気に自信を深めたせいか、憧れの対象も欧米人より日本人となってバブルを迎える。だが崩壊後、国力低下の証か、折しも世界的な盛り上がりを見せていたスーパーモデルブームを諸手を挙げて受け入れ、90年代はスパモ人気が社会現象となるほど、異常なボルテージを示した。

 ブームの火付け役リンダ、クリスティー、ナオミたちの一挙手一投足、私服や食べ物、暮らし方までが情報として最も価値あるものとなる不思議な現象も。当時は明らかに体型至上主義、あの体があれば豪華な宝石など不要、細身のジーンズ1本で圧倒的な存在になれるという新しい美意識が浮上。

2024.07.04(木)
文=齋藤 薫