コロナ禍でなければ、出産の大変さを目に焼き付けてもらおうと立ち会い出産を確実に希望していたと思いますが、それは叶わぬ夢に。ここから、私の長い長い孤独な戦いが始まります。

 すぐにコロナのPCR検査をし、結果が出るまで何十分か待つことに。そして、エコーで子宮内の様子を見たり、お腹の張り具合を測る心電図のようなものを付けられ、横になって過ごします。その間、マスクは必ず着けていなくてはならなくて、息苦しさを感じていました。

破水、お産に入る準備で病室に

 そこから約2時間ほどして、先生から、

「破水してますね。まだ子宮口は開いていないけど、お産に入る準備をしましょう」

 そう言われ、即入院することに。それまでいた診察室から病室へ案内されました。

 そのとき、看護師さんから「出産まで飲食ができないから、今のうちに何か食べておいたほうがいいですよ」と言われ、持っていたクリームパンを食べることに。

「クリーム部分は食べちゃダメですよ」

 ということでクリームパンのパン部分をちぎってちびちびと食べることに……。無痛分娩(※出産時の痛みを和らげるために麻酔を用いる方法)をお願いしていたので、この後に入れる麻酔の関係で飲食に制限があったようです。でも、このときは食べたクリームパンの外側を最後に、33時間におよぶ出産に飲まず食わずで挑むことになるとは、このときはまったく予想していなかったのです……。

想像をはるかに超える痛みの陣痛

 朝9時頃、陣痛はなんとなく感じながらも、まだ子宮口が開かない……。陣痛がなかなか進まないので陣痛促進剤(※出産時に子宮の収縮を促す薬)を入れることになりました。おかげでだんだんと強い陣痛を感じるように。それでも一向に子宮口が開いてくれない。看護師さんからはとにかく歩くように促されました。

 そこから私は、病室内や廊下をヒーヒー言いながらひたすら行ったり来たり。「ぽぽちゃん、早く下りてきて!」と念じながら、ただただ必死に歩き続けました。

 長~い廊下をもう何往復したかわかりません。夕方になると陣痛の痛みもどんどん増してきます。痛みもしんどいけれど、もう体力が限界……! たまらず看護師さんに訴えました。

「もう歩けません!」

 お腹にズドーンと隕石が落ちてきたような、鉄球が入っているかのような激痛が数分感覚で襲ってくるのです。重たい、苦しい、痛い! それに加え、普段のウォーキングでも歩かない距離を歩かされるなんて、拷問……? 陣痛は想像をはるかに超える痛みで、早くも心が折れそうな私。

2025.05.05(月)
文=あいり