「手を上げられない」「肩こりのだるさ」はなぜ発生する? TSOC北参道院長でハワイ大学客員教授の菅谷啓之氏が、肩の構造とその健康を考える上での重要なポイントについて解説します。

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肩の関節の形状は……?

 加齢とともに、痛みだけでなく、凝りなど不定愁訴を引き起こすのが肩です。

 肩の関節は体幹において大事な役割を果たしていますが、他の関節と比べて、その造りが極めて不安定なのが特徴です。

 形状は、「ボール&ソケット・ジョイント」と呼ばれ、丸いボールをお椀が包むような構造になっています。たとえば、同じ構造の股関節は、大腿骨の最上部にあるボール部分を、骨盤側の「寛骨臼(かんこつきゅう)」というお椀部分がしっかり包み込む形状で、立てば上から重心もかかって極めて安定する造りです。

 それに比べて肩は、上腕骨のボール部分と、肩甲骨側の「関節窩」というお椀部分が接してはいますが、この2つの骨を直接つないでいる骨は鎖骨だけ。しかも上からの荷重をほとんど受けていない。周囲の軟骨や靭帯や筋肉の力を借りて、ようやく「関節」としての機能を維持できる構造なのです。そのため、骨の位置がズレたりすることで、痛みや動きが悪いなどの問題が生じます。

2025.04.29(火)
文=菅谷啓之