この記事の連載

変化を求め、人とつながろう!

『AIR/エア』

「最近観て、ビジネスパーソンとしてぐっときた映画です。

 この映画で描かれるのは、あのエアジョーダンが誕生するまでの実話。ナイキ側と、若かりし日のマイケル・ジョーダン側との交渉劇がいいんです! この交渉の結果、ある大革命が起きる。それまでのスポーツ界の歴史がひっくり返った瞬間に興奮します。意外なんですが、このエアジョーダン誕生までは、ナイキは米国でも人気がなく業績不振の会社だったんです。

 そして、そのブレイクスルーにあったのは、変化を求める人間同士がつながったことだったんですよ。それこそが起爆剤になっているんです。

 出版界も厳しい時代といわれるけれど、突破口はある、と僕は信じています。もちろん他の業界も同じです。『どうせ何をやっても変わらない』ではなくて、変化を求める人同士でつながって動いていくことで、未来はよくすることができる、と勇気をもらえる映画です!」(黒田さん)

●あらすじ●

1980年代、ナイキのバスケットボール部門は業績不振にあえいでいた。立て直しを命じられた社員ソニーは、無名の新人だったマイケル・ジョーダンに目をつける。しかし彼はNBAデビュー前で、他社のファンという不利な条件。ソニーは情熱と独創性で彼を説得し、前代未聞の契約に挑む。負け犬と呼ばれた男たちが挑む、運命をかけた逆転劇が始まる。

『AIR/エア』

監督:ベン・アフレック
出演:マット・デイモン、ベン・アフレック、ジェイソン・ベイトマンほか
2023年/アメリカ/112分

どんな仕事にもスポットライトを当てる

『スクール・オブ・ロック』

「無職の主人公・デューイが、教員免許を持つ友人になりすまして名門小学校の先生になり、勉強は教えられないから音楽やるぞ! バンドやろうぜ! って周りを巻き込んでいくお話。感動のサクセスストーリーなんだけれど、僕が『うわ~っ』と思ったところはもうひとつあるんです。

 それは、デューイが、クラスのひとりひとり全員に役割を与えたところ。バンドってギター、ベース……って割り振ってもすぐ終わってしまうじゃないですか。

 彼らはとてもまじめな子どもたちなんで、『私はなにをやればいいでしょうか』となる。そこでデューイが、服を作れるなら衣装係をやってくれ、校長先生が来るかもしれないから見張りを頑張れ、と役割を与えると、みんな張り切っていくわけです。

 最高なのはラストのバンドコンテストのシーン。当日の急な曲変更で不安になっている照明係の男の子に、『お前ならできる。自分でアレンジしてやってみろ!』とデューイは背中を押すんです。そして演奏が大成功をおさめたあと、デューイは『やったな!』と照明係の子を抱き上げる。

 僕のPRの仕事も、そして多くの人の仕事も、自分にスポットライトが当たるわけではない。でも、みんな一生懸命やっている。リンクレーター監督が、そういう普通は見えない努力をしっかり描いてくれたのがうれしいですよね。どんな仕事も必要とされていて、それが喜びあることを改めて感じさせてくれる映画です」(黒田さん)

●あらすじ●

落ちぶれたロックミュージシャンであるデューイが、小学校の教師になりすまし、友人の代わりに授業を行うコメディ映画。デューイは、生徒たちにロック音楽を教え、バンドを結成させる。彼は音楽を通じて、生徒たちに自己表現やチームワークの大切さを伝えるとともに、彼らからも多くのことを学んでいく。最終的に、生徒たちの成長とデューイの情熱が感動的に描かれる。

『スクール・オブ・ロック』

監督:リチャード・リンクレイター
出演:ジャック・ブラック、ジョーン・キューザック、サラ・シルバーマン、マイク・ホワイトほか
2003年/アメリカ/108分

相手にイメージさせることの大切さ

『ビフォア・サンライズ 恋人までの距離』

「『スクール・オブ・ロック』と同じリチャード・リンクレイター監督の作品ですが、こちらはしっとり。はじまりのシーンから、名画の予感しかしません。『非効率思考』にも書いたんですけれど、繰り返し何度も観ている作品です。

 列車の中で偶然出会った男女、ジェシーとセリーヌの物語。僕が最高に好きなのは、セリーヌに一緒に列車を降りてほしいジェシーが、彼女を誘うのではなく『もし君が僕と一緒に列車を降りたらどうなるか?』と彼女に想像させるシーン。結果、彼女は彼と一緒に列車を途中下車して、朝まで過ごすことを選びます。

 つまり、相手に想像させることが、相手を動かすことにつながる。だから、僕は、打ち合わせやメール、企画書では、本の内容の説明はしません。『もし、この企画を実現させるとしたら、何が必要か?』ということを相手がつい想像してしまうような提案を心がけてるんです。これはPRはもちろん、どんな仕事でも大切なことだと思っています。

 この作品は『ビフォア・サンセット』『ビフォア・ミッドナイト』と続きます。どれも、大きなドラマが起こるわけではない会話劇です。だからこそ、日々のなんということもない会話の中で、いかに相手の心を動かすか、というヒントが満載なんです。ぜひシリーズで観てみてください」(黒田さん)

●あらすじ●

パリ行きの列車で偶然出会ったアメリカ人青年ジェシーとフランス人女子大生セリーヌ。翌朝の飛行機で帰国するまでのひと晩を共に過ごすことになるというものだ。ウィーンで下車したふたりは街を歩きながら、人生や恋愛について語り合い、次第に惹かれ合っていく。限られた時間の中で育まれる感情の変化が、自然な会話と美しいウィーンの風景とともに描かれている。

『ビフォア・サンライズ 恋人までの距離』

監督:リチャード・リンクレイター
出演:イーサン・ホーク、ジュリー・デルピー、アーニ・マンゴールド、ドミニク・キャステルほか
1995年/アメリカ/105分

黒田剛(くろだ・ごう)

書籍PR/非効率家。株式会社QUESTO代表。1975年、千葉県で「黒田書店」を営む両親のもとに生まれる。須原屋書店学校、芳林堂書店外商部を経て、2007年より講談社にてPRを担当する。2017年に独立し、PR会社「株式会社QUESTO」を設立。講談社の『妻のトリセツ』(黒川伊保子)は、シリーズ70万部を超えるヒットを記録。『いつでも君のそばにいる』(リト@葉っぱ切り絵)をはじめとする葉っぱ切り絵シリーズは30万部を突破。『続 窓ぎわのトットちゃん』(黒柳徹子)は、発売2ヵ月で50万部突破。その他、KADOKAWA、マガジンハウス、主婦の友社、岩崎書店など、多くの出版社にてPRを担当。非効率ながらも成果を出す独自の仕事術をセミナーなどを通して伝えている。

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2025.05.05(月)
文=CREA編集部