“常識を疑う”ことが未来を切り拓く!
『きっと、うまくいく』

「この映画が作られたインドは、教育システムを改善して、テクノロジーで世界に挑んでいます。ただ、一方では、そのひずみによって精神的に追い込まれたり、自殺してしまったりする人も多いんです。
この物語は、インドの名門工科大学で出会ったランチョー、ファルハーン、ラージューの3人を中心に進んでいきます。その学生生活で起きる物語と、10年後、卒業してから行方不明になってしまったランチョーを、あとのふたりが捜すという物語が並行して描かれます。
ランチョーは大学生活の中でさまざまな“発明”をして、仲間を救います。僕が特に好きなのは、秀才だらけの大学でも天才と呼ばれるランチョーが、あんまり先生の話をこねくり回すので、『じゃあ、お前が2時間講義を受け持ってみろ!』と命じられるシーン。
ランチョーはもちろん何も用意してきていませんが、黒板にものすごく長い英単語を書き、生徒たちに『この2語から例文を書いてください』というお題を出します。でも、誰もその意味をわからない。だって、それはランチョーが友だちの名前をもじって作ったオリジナルの言葉なんですから! 教室は大爆笑に包まれます。
“発明”は権威主義の大学で多くの人の運命を変えていきます。そして、10年後のランチョーも……。
大事なのは“常識を疑う”ってこと。ゼロをイチにするのに欠かせません。まあ、難しいことを抜きにしても、タイトル通りとってもハッピーな作品なので、すべての人に観てほしい!」(黒田さん)
●あらすじ●
インドの名門工科大学ICEで出会った型破りな自由人ランチョーと、夢に悩むファルハーン、神頼みのラージュー。彼らの学生時代の友情と成長を描きつつ、10年後、行方不明となったランチョーを捜す旅が始まる。学歴社会や教育問題を背景に、人生の本質を問いかける感動の物語。「きっと、うまくいく」という前向きなメッセージが心に響く。
『きっと、うまくいく』
監督:ラージクマール・ヒラーニ
出演:アーミル・カーン、カリーナ・カプール、R・マーダバンほか
2009年/インド/170分
やっぱりデータは大事。でも扱うのは人間
『マネーボール』

「大好きなブラッド・ピットが主演です。僕はこの作品のブラピみたいに話すために毎日英語の勉強をしています(笑)。かっこいいだけじゃなくて、これもまた素晴らしい作品なんです。
データを重視して資金に乏しい野球チームを盛り返すというストーリー。
データって、とても大事なんですよ。本だって、購買層の把握やメディアPRの効果測定など、感覚ではなくて、データ分析が必要です。この工程は、僕も大切にしています。
ただ、データを扱うのは人間なんです。データもちゃんと使えて、感覚も感情もある。それが理想だということを教えてくれる映画なんです。
もうひとつ、電話での交渉のシーンもぜひチェックしてほしい。
今はメールでのやりとりも多いですが、電話のほうが話が早いこともありますよね。野球チームのGMも僕も、AさんとBさんをつなぐことが多い仕事ですが、その2本の電話の間でどんなふうに動くものなのか、ちょっと参考にしてもらうと面白いかもしれません」(黒田さん)
●あらすじ●
オークランド・アスレチックスのゼネラルマネージャー、ビリー・ビーンが統計学「セイバーメトリクス」を用いて、資金難のチームを改革する実話をもとにした物語。従来のスカウト手法を覆し、データ重視で選手を選抜。周囲の反発を乗り越え、前例のない20連勝を成し遂げた。スポーツと経営の革新を描いた作品。
『マネーボール』
監督:ベネット・ミラー
出演:ブラッド・ピット、ジョナ・ヒル、フィリップ・シーモア・ホフマン、ロビン・ライトほか
2011年/アメリカ/133分
2025.05.05(月)
文=CREA編集部