ときめきとほろ苦い思いが交差する大人の女性同士の関係を描いた志村貴子さんの『おとなになっても』が待望の実写ドラマ化! それを記念して、志村貴子さんに実写化への思いやご自身の創作について伺いました。
》名作を生み続ける漫画家・志村貴子の“物語のクライマックス”の作り方「過去の自分が遠投したボールを拾いに行くように描く」
女性同士の関係性を描いた作品が次々に増加

――後篇では、創作術についてもお伺いしていきたいです。
志村 はい。よろしくお願いします。
――「おとなになっても」の連載が始まった2019年にも、「週刊文春WOMAN」で志村さんにインタビューをさせていただきました。ちょうどその頃、ドラマや映画などの領域で女性同士の恋愛を描いた作品が目立ったり、2018年の暮れに百合SF特集が組まれた『SFマガジン』2月号に予約が殺到して、異例の出版前重版に踏み切ったことが話題になりました。「それに先駆けて、良作を生み出し続けている百合マンガは、書店の扱いも確実に増えています。それに対してどう思われますか?」とお伺いした時、「もっとそれが当たり前になっていくといいなと思います」というお話をいただいたのですが、実際に女性同士の関係性を描いた作品はすごく増えましたよね。
志村 増えましたね。
――もはや、それをことさら粒立てず、皆が普通に楽しんでいる状況が生まれていると感じます。志村さんは今の状況をどのように感じていらっしゃいますか?
志村 そうですね。それが当たり前の風景になってきましたよね。あと、よく「女性同士の恋愛についてどう思いますか?」と聞かれるのですが、そういう質問自体がなくなるといいなと思います。
――当たり前になってきた背景にあるものについて、志村さんなりの考察などあれば伺いたいです。
志村 うーん、そんな大層なものはないですね。その都度、描きたいものを描きたい時に描いているだけなので。
――女性同士の関係性を描いた物語を読みたいという世間の声も高まっているように感じるのですが、その辺りはいかがでしょう? 求められているなと感じることはありますか?
志村 自分が求められているかとかは分からないですけど、求められるからではなく、身勝手に描き続けてきたマンガ人生だったので、デビューから30年近くやってきてようやく、「そういう声にも耳を傾けるべきなのかな」と、考えたりするようになりました。それより今、自分の気力の衰えのようなものを感じているんです。
――そうなんですか?
志村 これまでは私の作品を読んで、たまたま刺さってくれる人がいた恵まれた流れだったんだなということを常々考えるようになりました。特定のこの作品ということではなく、SNSや広告でたまたま流れてきた若い方の作品に触れると瑞々しくて、もともとあるんだかないんだか分からない自分の感性が鈍ってきていると言うか、自分がどんどん置いていかれているように感じます。若い方といっても実年齢を知らないので、若い方じゃなかったりするかもしれませんが。
2025.05.04(日)
文=山脇麻生
写真=末永裕樹