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実写化で「この子たちは本当にいたんだ」と実感

――ネタバレにならない範囲で、印象に残ったシーンなどあればお伺いしたいです。

志村 全てというか、綾乃が教室に入っていくような何気ない動作ひとつ見ても感極まってしまったというか。自分のマンガは全部ふわふわしているんですけど、生身の人が演じてくださることで、「この子たちは本当にいたんだ」と実感させてもらえたのが大きかったです。あと、内容とは関係ない話なんですけど、自分が書いたセリフを生身の人が話すのを改めて聞いて、「結構、恥ずかしいことを言わせてるな」「今からでも変えたい!」とか、そういうことをずっと考えていました。

――実写化やアニメ化の際に俳優さんや声優さんが話す、ご自身の考えたセリフを聞いて、「うわー!!」となるマンガ家さんのお話は何度か伺ったことがあります。

志村 アニメ化していただいた時も、気恥ずかしさみたいなものがあったりしたんですけど、実写化はより現実的になるので、なかなか難しい時間でしたね。対峙しなきゃいけない時間と言うか。恋愛系の作品ってすごく素敵なんですけど、照れくさい部分もあって、それが自分の描いた作品となると余計に、「こんなこと言うかな? 現実で。言わない、言わない」となってしまう。それを素敵に表現してくださるプロの俳優さんは本当にすごいと思います。様になりますよね。

――たしかにですね。一見ゆるふわな綾乃ちゃんのミステリアスな魅力や、今まで辛い恋愛をしてきた朱里ちゃんが最初は警戒している感じが様になっていました。綾乃ちゃんが朱里ちゃんを押し倒すシーンも印象的で。栗山さんがパッと目を見開いて「きゅるん」って表情になるところで、「それ、マンガのきゅるんと同じヤツ!」ってなりました。

志村 原作を読んでくださってる方には、そこを楽しみにしていただきたいです。「お二方ともすごく可愛い表情してるから見て!」みたいな。

――最後まで観るのが楽しみです。志村さんはもう最後までご覧になったんですよね?

志村 はい。でも、観るのにすごく緊張したんです。物理的に離れて観たぐらい。

――画面から距離を置いて?

志村 近距離で観れなくて、部屋の一番遠い所から観ました。撮影中の見物人みたいな感じです。「なんか撮影やってるぞ」みたいな。

――その様子を想像してしまいます。実際の撮影現場には行かれたんですか?

志村 タイミングが合わなくて……。貴重なチャンスをどぶに捨ててしまいました。

2025.05.04(日)
文=山脇麻生
写真=末永裕樹