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●「骨付き羊背肉の塩煮」(1,800円)

 味坊で豪華に決めたいときにぜひ頼んでみて欲しいのが、4人前はあるかという大ボリュームなこの塩煮です。

「これは中国・東北地方もそうですが、地続きの内モンゴルでもよく食べられている伝統的な調理法です。味の決め手は冷たい水から羊を煮ていること。こうすると臭みの原因のアクがよく出るので、これをしっかり取ることで日本人の人でも食べやすい仕上がりになるのです」

 羊のおいしさを真正面から味わえるワイルドな料理ですが、その味はとても繊細です。トロトロホロホロの羊肉は臭みの少ないアイスランド産。塩ニンニクダレ、ゴマダレ、ニラペーストと毛色の違う3種類のタレが付いてくるのも楽しいメニューです。

●「香菜と青唐辛子のサラダ」(800円)

 そんな塩煮と一緒に頼んで欲しいのがこのメニュー。

 ザクザクと刻まれたパクチーと細切りされた青唐辛子にみずみずしいきゅうり。これらのフレッシュな野菜に合わせるのは、口当たりの良いごま油と塩をベースに黒酢などを加えた特製調味液。。一口食べると羊肉の脂がサッパリとリセットされる上、青唐辛子の辛味で食欲がさらに刺激されること請け合いです!

●「ラムのスペアリブカツ」(1,380円)

 次は梁さん一押しだという、羊肉のスペアリブをカツレツにした驚きのアイデアメニュー。曰く「これは本場中国でも食べられない、味坊だけのオリジナルだね!」とのこと。

 一口食べてみると、スパイスの効いたカリッとした衣と、その上に振りかけられた砕きピーナッツの香ばしさが鼻を抜けます。噛みしめていくと、カツレツという響きからは想像できないほどジューシーでプルップルのスペアリブから、肉汁があふれ出してくるのがわかるはず。

「スペアリブのカツは意外かもしれないですが、中国人は“お肉は骨の周りが一番おいしい”ということを知っているので、ダマされたと思って食べてみてくださいね」

●「ニラと玉子のおやき」(750円)

 「これはね、私が小さい頃から母に作ってもらっていた思い出の味ですね」と梁さんが語る通り、最後は素朴でホッとする味わいの料理をご紹介します。

 平たく潰すように表面を焼いたおやきの食感は、パリパリさとモチモチさが両立していて実に楽しいです。ホクホクとした卵と共に、小さく刻まれたニラがたっぷり入っているのですが、その香りはキツくなく、むしろ、強くて豊かな甘みを感じました。

 多くの食通を唸らせてきたと同時に、あくまでも庶民の憩いの場としての矜持も保ち続けてきた味坊。料理の話をしているときの実に楽しそうな梁さんの笑顔はとてもチャーミングでした。自ら食を楽しみ、その味を追求してきた味坊の進化は、まだまだ止まらないはず。神田に立ち寄った際にはぜひ立ち寄ってみてはいかがでしょう。

神田味坊

所在地 東京都千代田区鍛冶町2-11−20
電話番号 03-5296-3386
営業時間 11:00~23:00(L.O.22:30)、土曜12:00~23:00(L.O.22:30)、日曜12:00~22:00(L.O.21:30)
定休日 無休
https://www.ajibo.tokyo/

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2025.04.29(火)
文=むくろ幽介
写真=志水 隆