悪女、妖怪人間や地縛霊、クセのある役も演じ話題に

 杏の俳優デビューは、2007年に刑事役で出演したドラマ『天国と地獄』で、翌年には出演映画『櫻の園』も公開され、本格的に俳優の道へと踏み出した。2009年の大河ドラマ『天地人』では、戦国大名・伊達政宗の正室・愛姫(めごひめ)を演じた。政宗といえば父がかつて同じく大河『独眼竜政宗』で演じて一躍スターとなっただけに、話題を呼んだ。

 2010年にドラマ『泣かないと決めた日』で主演の榮倉奈々をいじめる悪女役を演じたあたりから、演技力が注目され始める。翌2011年には『名前をなくした女神』でドラマ初主演し、さらに往年のテレビアニメを実写ドラマ化した『妖怪人間ベム』のベラ役で子供たちの人気を集めた。ベラは妖怪人間、『(かす)かな彼女』(2013年)で演じたヒロインは地縛霊と、クセのある役が続く。

 2012年の大河ドラマ『平清盛』で扮した北条政子も悪女のイメージがあるだけに、オファーを受けたとき、周囲からは「あの悪い女をやるの?」「どうやって役作りするの?」との声もあったらしい。そこを彼女なりに調べてみて、すごくチャーミングな人だったのではないかと考えるようになったという。実際、彼女の演じる政子は天真爛漫で、野山を駆けまわったりと、まさに適役であった。

 このように、さまざまな役に起用されることについて彼女は、《役柄を通して、自分の知らなかった自分を発見できたり、日頃考えてもいなかったことに気づかされたりすることも多いので、こんなに変化に富んだ役ができることはとってもうれしい》と喜びを隠さなかった(『婦人公論』2011年10月22日号)。

 前出の朝ドラ『ごちそうさん』でブレイクしたのは、この発言から2年後のことである。

「親の力を借りるのはイヤだった」→父とのツーショット、双子&年子と海外移住も…39歳になった杏の“次なる目標”〉へ続く

2025.04.17(木)
文=近藤正高