夫・ダルビッシュ有との馴れ初め

内田 聖子さんは13年からアメリカに拠点を移されましたね。ダルビッシュさんはその前年からMLBでプレーされています。お二人はアメリカで出会ったんですか。

ダルビッシュ 振り出しはカナダです。最初の結婚がうまくいかずに、まだ4歳のひとり息子とこれからどうやって人生を立て直そうかと思っていたとき、トロントの大学でレスリング部のコーチをしていた姉に「ひと部屋空いているけど」と言われ、私は「行く!」と即答しました。息子とカナダに到着し、空港の税関で“Can I apply this?”と拙い英語でビザを申請したんです。そうしたら通ったんですよ。

内田 え、そんなの聞いたことない。普通は日本でビザを取ってから行きますよね。

ADVERTISEMENT

ダルビッシュ 32歳にもなってそんなことさえ知らず、ただ、ひと足先に海外に出ていた姉に聞いて、日本レスリング協会に推薦状を書いてもらうということだけはやっていました。それがよかったのか、ビザを取得した翌日には運転免許証、保険証なども全部取れちゃいました。

内田 すごい! 奇跡だ。

ダルビッシュ 姉と主人が知り合いで、テキサス・レンジャーズにいた彼から「今度、トロント・ブルージェイズとの試合に行きます。観にきてください」と誘いがあったんです。それで姉や姉の子どもたちのお供で私も試合を観戦に行って、主人とはそのときに初めて会って、その1年後ぐらいにアメリカで再会しました。

 私がカナダからアメリカに移ったのは、アメリカレスリング協会の女子レスリング監督から「ナショナルチームのコーチのポストに空きが出るんだけど興味ない?」というメールをいただいたからです。英語もろくにできないのに指導なんてムリだろうと思い“No,sorry”と返信したものの、いや待てよ、私はこれから稼がなくては息子を食べさせていけないんだと考え直し“Sorry,Yes!”(笑)。

内田 常に即断即決ですね。

ダルビッシュ それはですね、目の前のことに対処するのに精一杯で、あまり深く考えないからだと思います。

内田 直感に委ねる。肝が据わっていないとできないですよね。

2025.04.18(金)
対談構成=小峰敦子