結婚とは、赤の他人であったふたりが、自分たちが唯一無二の関係であると思ったり、それが大いなる勘違いであったと気付いたりしながら、格闘する過程でもある。なぜ、人は人と一緒にいることを選ぶのか? 夫婦、家族にかぎらず、人生にパートナーシップは必要なのか?
その問いとともに、内田也哉子さんが様々なゲストとパートナーを考える連載「Mirror River」の第2回にダルビッシュ聖子さんが登場。『週刊文春WOMAN 2025春号』より一部を編集の上、紹介します。

スーパースター選手をして「結婚して変わった」と言わしめた
内田 今日はサンディエゴのダルビッシュ聖子さんとオンラインで繫いでお話を伺います。聖子さん、よろしくお願いします。
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ダルビッシュ はじめまして、ダルビッシュ聖子です。実は也哉子さんにお礼を申し上げたいと、ずっと思っていました。私は女子レスリングの選手を2006年に最初の結婚のため引退し、出産し、3年後に28歳で現役復帰したのですが、そのときの激励会にお父様がいらっしゃったんです。
内田 え、裕也が? それは初耳です。どうして父なんかが伺ったんでしょうか。
ダルビッシュ アスリートの交友関係にはたまに面白い人が入ってきてパッと消えることがありまして、そのときもパッと消えた人と内田裕也さんがお知り合いだったようです。お知り合いの方は消えてしまったのに、そしてお父様は私への義理も何もないのに、おひとりで来てくださいました。
内田 そうでしたか。父は他界して6年経ちますが、いまだにいろいろなところで生前のエピソードを聞くことがありまして、だいたいが「ああ申し訳ございません」と謝ることになるんですけど。
ダルビッシュ とんでもない。「ロックンロール!」ってシャウトしていただいて。
内田 変わった人が来ちゃいましたね。
ダルビッシュ 一瞬にしてその場を盛り上げ、私もどんなに励まされたことか。本当にありがたかったです。おかげで復帰第一戦のポーランド女子オープンで優勝したんですよ。何のご恩返しもできないままでいたら今回のお話をいただいたので、少しでも也哉子さんのお役に立てばと思ったのですが、でも私でいいのでしょうか……。
ダルビッシュ(旧姓山本)聖子さんは父はオリンピック選手、母はレフリー、姉・美憂さんは世界チャンピオン、兄は山本KIDの名でお馴染みのレスラー・総合格闘家というレスリング一家に生まれ、自身も1999年、2000年、01年、03年の世界チャンピオン。

夫はメジャーリーガーのダルビッシュ有投手。2004年のドラフト会議で日本ハムに1位指名されて入団。12年にテキサス・レンジャーズに移籍しMLB(メジャーリーグ)デビュー。ロサンゼルス・ドジャース、シカゴ・カブスを経て20年からサンディエゴ・パドレスでプレーしている。昨シーズン日本人初のMLB2000奪三振を達成した。二人はともに再婚で16年に入籍。現在は夫妻と子ども5人の一家7人でサンディエゴに暮らす。
内田 この連載はパートナーについて考えてみたくて始めたものなんですね。ある日、夫(本木雅弘)がふと、「パートナーシップについて話を聞くならダルビッシュ聖子さん」と言ったんです。私もそうだ! と思いました。
19年にダルビッシュさんがスポーツ紙のインタビューに答えて、聖子さんと結婚して昔の自分が思い出せないくらい変わったとおっしゃっていましたよね。あのスーパースター選手をして「結婚して変わった」と言わしめるとは、これはお話を聞かずにいられようかと。
ダルビッシュ (笑)。
2025.04.18(金)
対談構成=小峰敦子