この記事の連載
- 浅野忠信x内田也哉子対談 前篇
- 浅野忠信x内田也哉子対談 後篇
ドラマ「SHOGUN 将軍」でゴールデングローブ賞助演男優賞(テレビドラマ部門)を、日本人として初めて受賞した浅野忠信さん(51)。
謎だったルーツ、なぜハリウッドに行ったのか、なぜ音楽をやめたのか、結婚観……2022年に『24時間テレビ』スペシャルドラマ『無言館』に主演した浅野さんと、無言館共同館主である内田也哉子さんの対談を『週刊文春WOMAN2024夏号』より転載する。(前後編の前編/後編を読む)
『SHOGUN』撮影中に舞い込んできた脚本
内田 浅野さんも絵を描かれ、アートがお好きでいらっしゃいます。先ほども熱心に作品をご覧になっていました。2年前には『24時間テレビ』(日本テレビ)のスペシャルドラマ『無言館』で窪島誠一郎さんの役を演じていらっしゃいます。
浅野 オファーをいただいたときは驚きました。え? 24時間テレビのドラマの主役がオレ? ジャニーズじゃなくていの?
内田 (笑)
浅野 面白い、絶対にやろうと思いました。当時ハリウッド制作の連続ドラマ『SHOGUN 将軍』の撮影でカナダに滞在していて。
内田 今、大ヒットしていますね。
浅野 もうヘトヘトになってしまって、日本に帰っても仕事はしないと固く決めていました。ところが帰国が近づいたある日、なぜか「まだ仕事できるかも」という思いがよぎった。そのタイミングでこのお話が来た。戦没画学生の絵という、人々が気に留めていなかった作品を集めるために全国を行脚し、美術館まで建ててしまった窪島さんのガッツが刺さりました。
内田 窪島さんは自伝を含めてたくさん本を著していますが、それも読まれたんですか。
浅野 いいえ、僕の場合は脚本がすべてなんです。
内田 うちの夫(本木雅弘)の場合は、その作品にまつわるあれこれをしらみつぶしに調べまくり、混乱してのたうちまわってから、最後は情報を捨てて素に立ち戻る。一度、考え得る回り道をすべて通ってからじゃないとカメラの前に立てないので、もう見てられないです。一方、母は家で台本を開いているのを見たことがない。家の中に正反対の2人がいました。
浅野 どちらもすごいな。
内田 ドラマの放送後、ここを訪れる人が急増したそうですよ。
浅野 みなさん、この細い坂道を上ってきてくださったんですね。
内田 浅野さんも私も戦争をまったく知らない世代ですが、浅野さんのご家族は戦争の影響を色濃く受けていらっしゃいますね。浅野さんがゲストの『ファミリーヒストリー』(NHK)はとてもインパクトが強かったです。
2025.01.17(金)
文=こみねあつこ
写真=平松市聖