がんになっても仕事を続ける理由

――がんになってさらに仕事に邁進されているように見えます。

アンナ 私、デビュー30年になるんですけど、ファッションとかビューティの世界に少しずつ違和感を持つようになっていたんです。日本って人前に出る仕事はほぼ全部、若い人ですよね。そんな状況の中、この10年は自分の年齢と経験が一致する仕事が見つからなかった。

 がんがわかる直前の1年はキャリアのことを考えてはちょっと鬱っぽくなったりしていて。じゃあ一体自分は何がしたいんだろう?と思ってた時にがんになって、全部一変しちゃった。やっと自分にとっての大事な仕事が回ってきたなって、今は思っています。

――特に標準治療について精力的に発信されています。その真意は?

アンナ 父や周りの大人たちが標準治療をしていたこともあるし、そもそも標準治療って、医学的なエビデンスに基づいた、現段階で最も効果的な治療なんですよね。そういう意味でも、自分としては他の選択肢はまったくなかったんですけど、私が標準治療することに周りが驚いたことに、逆に驚いちゃって。

 自由診療や食事療法を否定するわけじゃないし、ステージや状況によっては、試してみたい、と思う人がいるのもわかります。ただ、そういった民間療法にはガイドラインがないので、エビデンスがないものが多いんですよね。それを無責任に勧めてくるスタンスには困惑するし、ただでさえ心が弱りやすいタイミングなので正しいジャッジができない人もいると思う。

 実際、がんになってから私本人だけじゃなく、ママにもいろんなお誘いがあって。民間療法とかサプリとか宗教とか、ね。

クラウディア 知り合いから、「聞くだけでもいいから」って言われて。でも、アンナから「標準治療以外は嫌」って聞いてるから、「うちの子は今やっている治療以外はやらないから聞けません!」って、電話を切ったの。

アンナ 横で聞いてたんですけど、しっかり断ってて、「ちゃんと言えてすごい、ママ!」って。

クラウディア はじめてアンナから褒められた(笑)。

※がん治療を開始したことで一足先に訪れた更年期症状や数十年ぶりの母・クラウディアさんとの同居生活、今後の治療などについて語った全文は『週刊文春WOMAN 2025春号』でお読みいただけます。

Anna Umemiya
1972年8月20日生まれ、東京都出身。ファッション誌『JJ』のモデルとして活躍し、タレントとしても注目を集める。2024年には浸潤性小葉がんのり患を公表し、思いや経験を積極的に発信。現在はメディア出演や執筆活動を中心に活動。

Claudia Umemiya
ロサンゼルス生まれ。幼少の頃に来日し、20代でモデルとして芸能界にデビュー。俳優の梅宮辰夫と結婚し、梅宮アンナを出産。娘のアンナ、孫の百々果の3代でのメディア出演も多数。

写真:鈴木七絵(アンナさん)、平松市聖(クラウディアさん)

2025.04.14(月)
文=小泉なつみ