がんになって初めて、働きながら治療できると知った

――がん発覚後、すぐに病気を公表されました。ためらいはなかった?

アンナ 告知された瞬間に、「これって私しか言えないことじゃない?」って思ったんですよね。そこからは、どうやって公表するか、SNSでの発信の仕方はどうするか、ものすごいスピード感で決めました。がんがわかってから、本質を追求するようになったんです。それまで曖昧なままにしていたものが白黒はっきりする感じ。私はそれをがんセンサーと呼んでるんですけど。

 仕事を受けるかどうかの基準も変わりました。今後自分の病気のことを伝えていくなら同じ方向を向いている人たちと仕事したいと思ったし、どんどん発信していけるよう、働き方も変えましたね。

――がん治療をしながら仕事も続けていこうと思った?

アンナ 告知されてから何もしなかった日は一日もないんじゃないかな。ただ私自身、治療しながら仕事も続けられることは、がんになって初めて知ったんです。2000年頃から吐き気止めが進化して、働きながら治療できるようになったと先生から聞きました。

 でも、がんになったことを友だちに言ったら、「どこに入院してるの?」と返ってくる。世の中は全然アップデートされてないんですよ。「通院で抗がん剤やってるんだよ」って言うとびっくりされちゃうし、「死んじゃうかと思った」って言われたりね。

「また元気になられたら是非」番組出演が中止に

――がんになったことを周囲にもすぐ伝えた?

アンナ Yahoo!ニュースで知らせるわけにはいかないし、やっぱり直接言ってもらえないって寂しいじゃないですか。だから、まずLINEでよくやりとりしている人たちには片っ端から連絡して、お仕事先の方にも報告しました。100人いたら100人、リアクションは違いましたね。

 なんて声をかけていいかわからないんでしょうけど、「今の時代、がんは治る病気だから」って簡単に言われるのだけは嫌でした。あと、「大丈夫」って言われるのにもモヤモヤして。治療のことは本人が一番理解しているのに、他人から「大丈夫」って言われてもなぁ、って。じゃあ何て言ってほしいかと言われると難しいんですけど、嬉しかったのは、これまでと変わらずに接してくれることかな。

――治療と仕事を両立する中で、仕事相手からの配慮で違和感を感じたこともある?

アンナ 最初にがんを公表した時、出演予定だった番組から仕事を引き上げられたことがあったんです。一方的に、「また元気になられたら是非」と言われてしまったんですけど、先に確認してもらえたら体調的にも問題なくやれたのに、って。「がん患者は仕事をするな」と、排除されたような気持ちになりました。

 だから今は、“配慮”という名の差別や区別はやめませんか?って思うんです。治療しながら仕事もできることを、一人でも多くの人に伝えていきたいですね。

2025.04.14(月)
文=小泉なつみ