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「これがコナンの世界に持ち込まれたら?」という視点ですべてを考える

――『黒鉄の魚影』では、「世界中の防犯カメラを連携させる」といった非常に“いま感”のあるシステムが登場します。現実と「名探偵コナン」の世界観のバランスはどのように調整されているのでしょう。

 あくまで必要があるかどうかで判断しています。『黒鉄の魚影』のときは、黒ずくめの組織を絡めて灰原を窮地に陥れるというミッションがあり、前々から「こういうシステムがあったら面白いな」と考えていた「老若認証」のアイデアを盛り込みました。

 きっかけは「いまは顔認証システムがあるから、小さい頃に誘拐されてしまった被害者の写真から、未来の顔を法医学的に想像して見つけることが可能」という記事を読んだことですが、そのときに「これがもし実現したらコナンと灰原は大変なことになるはず」と感じたのです。

――コナン=工藤新一、灰原=宮野志保だと正体がバレてしまうわけですからね。

 そう、基本的に「コナンの世界に持ち込まれたら?」という発想からテクノロジーを持ち込むことにしています。『隻眼の残像』では「毛利小五郎、長野県警、公安が活躍する」というオファーを受けており、公安が暗躍するにはそれほどの何かがないといけない――という必要に迫られて司法取引や証人保護プログラムを取り入れました。「名探偵コナン」は元々CIAやFBIが登場する世界観ですし、証人保護プログラムも言及がありますから。

――FBIのジョディが灰原に証人保護プログラムを持ちかけるエピソードですね。『隻眼の残像』の劇中でもしっかりとおさらいされています。

 そういった要素を持ち込んでも世界観が壊れないほどの懐の深さが「名探偵コナン」の強みなのだと思います。(つづきを読む:「青山先生がしれっと新しい情報を脚本に入れてくるんですよ」脚本家が語る驚きの制作舞台裏

櫻井武晴(さくらい・たけはる)

1970年生まれ。1993年、東宝株式会社に入社。映画の企画やプロデューサー業務に従事したのち、在職中に第一回読売テレビシナリオ大賞で大賞を受賞。2000年に退社してからは脚本家として『相棒』シリーズ、『科捜研の女』シリーズ、『名探偵コナン』シリーズなどで活躍。

『名探偵コナン 隻眼の残像(せきがんのフラッシュバック)』

2025年4月18日(金)から全国ロードショー
©2025 青山剛昌/名探偵コナン製作委員会
https://www.conan-movie.jp/2025/

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2025.04.11(金)
文=SYO