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映画は劇作家たちにどんな影響を与えるのか

──みなさんは日ごろからさまざまなカルチャーに接していると思うのですが、最近注目されている映画や番組、音楽などはありますか? 稽古の前後などで話したりすることもあるんでしょうか?

金子 稽古終わりにみんなでご飯を食べたときは、みんなに「timelesz project」(timelesz・旧Sexy Zoneの追加メンバーを決定するオーディション。通称タイプロ。Netflixにて配信)を布教してましたね(笑)。個人的には、最近昔の映画のリマスター上映が多いので、映画を観に行くことが多いです。デビッド・リンチの『マルホランド・ドライブ』とか。いまも伊丹十三のフェアをやっていて、『マルサの女』をちょうど昨日観てきました。

玉田 そうなんだ。映画だと僕は黒沢清をよく観てて、『蛇の道』とかを新文芸坐で観ましたね。毎月やってるんですよね。

石黒 逆に私は最近ぜんぜん観れていないですね。映画を観るとその作品で頭がいっぱいになってしまって。消化するまで時間がかかるので、目の前に作品に取りかかれなくなってしまうんですよ。

金子 僕は石黒さんと真逆かもしれないですね。作品をつくっているときは、いろいろな映画を観たり本を読んだりしてしまいます。2行くらいの文章のためだけに資料を買ったり、近いジャンルの作品を手当たり次第に観てみたり。

石黒 つくっているときに観ると作品に集中できなくなりません?

金子 実はそうなんですよ。一応参考になるかもと思って観るんですけど、結局頭に入ってこなくて途中で止めることも多くて。ほんとに意味あるのかな? と思いながら観てますね(笑)。

石黒 どんどん頭の中に入ってきてしまって、書いている作品の文体も引きずられてしまうんですよね。だから最近はスイスの風景の映像みたいな、影響を受けにくいものしか観ていません(笑)。

──そんな石黒さんが演劇に取り組むうえでなにかの作品から大きな影響を受けたことはあるんでしょうか?

石黒 演劇を始める前にたまたま深夜の再放送で観た佐々木昭一郎の『四季ユートピアノ』という映像作品ですね。ドキュメンタリーのようなタッチで撮られた作品なんですが、ストーリーもあって、現地の人が演技もしてるんですが、あらゆる動作があまりにも自然すぎてドキュメンタリーなのかフィクションなのかわからなくなるんです。これくらいリアルなものを演劇で再現できたらと思っていました。

金子 前も話してましたよね。40年以上前の作品だからぼくもまだ観れてなくて。

石黒 幻想的なシーンとリアリズムに満ちたシーンが両立されていて、すごく面白いんですよ。この作品がきっかけとなって演劇を始めたわけじゃないんですが、ことあるごとに思い出す作品ですね。

2025.04.10(木)
文=石神俊大
写真=深野未季