「非常に悲しい場面」も
――映画を制作するうえで難しかったことは?
私たちだけではなく、テレビ局など各放送局もフーバオを撮影していました。視聴者の皆さんは、パンダたちのことを気にしているので、放送局は撮影したらすぐ放送する状況でした。一方、映画の場合、一般の方は公開まで映像を観られません。そのため放送局と差別化できるように、放送局が撮れない映像を撮ろうとしました。その点が難しかったですね。

――差別化するうえで、どのように工夫したのですか。
まず、アニメーションを加えることにしました。過去のフーバオの映像は、ほとんどのファンの皆さんが観ているはずだと考えたのです。もちろんその見慣れた過去の映像も素晴らしいのですが、それだけではなく、想像力を加えて、新しい形でお見せしたいと思いました。
さらに、放送局のカメラが入れないところも、入れるようにお願いしました。とてもデリケートな話ですが、映画に登場された飼育員のカン・チョルウォンさんのお母様が、フーバオが韓国を離れる前日に亡くなられました。映画で葬儀場が映っています。あの場所を撮影させていただくことは本当に難しく、私たちも悩みました。けれど、カン・チョルウォンさんとご家族の皆さん、エバーランドの皆さんが理解を示してくださり、撮影することができました。非常に悲しい場面です。
――いつから映画の製作を始めて、撮影や取材でフーバオに何回くらい会いに行きましたか。
製作開始は2024年1月だと記憶しています。大変ありがたいことに、私が望めば、毎日でもフーバオに会えたのです。通常なら、フーバオに会うために何時間も待たなければならない状況で。エバーランドと飼育員の方々に感謝しています。

――フーバオを中国へ送り出す直前の1カ月間は、エバーランドで検疫をしました。その間もフーバオに会えたのですか。
フーバオは検疫の間、隔離されていて、私たちは小さな窓からしかフーバオを観察できませんでした。この窓は映画に少し映っています。中に入ることはできなかったので、飼育員の方にフーバオを撮影していただきました。
2025.04.18(金)
文=中川美帆