この記事の連載
- フーバオ【前篇】
- フーバオ【後篇】
韓国で生まれたジャイアントパンダで、かわいらしい顔立ちや仕草から大人気になったフーバオ(福宝)が4月3日(水)に中国へ旅立って約2カ月。中国ジャイアントパンダ保護研究センター(以下、パンダセンター)は、6月にフーバオを公開する予定だと発表しました。
フーバオが暮らしているのは、四川省にあるパンダセンターの臥龍神樹坪基地です。渡航して最初の1カ月間の検疫期間中、パンダセンターは1週間おきにフーバオの近況をSNSで発信。その後も頻繁にフーバオの様子を伝えています。この1年ほどの間に、日本を含む世界各国から来たパンダたちにはなかった異例の対応です。
パンダセンターはフーバオについて「採食、活動、飼育員とのやり取りなどすべて正常です」と検疫終了直前の5月1日(水)に発表。5月16日(木)には「においや音を通じて近くのパンダと交流し、集団生活に徐々に適応しています」と伝えました。
一方で、最近は「フーバオの住環境が悪い」「部外者が入ってフーバオにさわる画像が流出した」といったフーバオを心配する声が複数あがっています。徹底した調査と措置を求める署名活動もインターネット上で展開されています。こうした事態を受け、パンダセンターは5月25日(土)夜、フーバオについて、園内で「職員以外がさわったり、エサをあげたり、撮影したりした状況は確認されていません」と発表。職員がフーバオの部屋を綺麗に掃除している動画も6月3日(月)に公開しました。
四川航空のチャーター機で韓国から中国へ
フーバオは、コロナ禍の2020年7月20日に誕生した3歳のメス。繁殖のため、4歳になる前に中国へ行くことになっていました。生まれ育った場所は、韓国の財閥サムスングループのサムスン物産が運営するテーマパークのエバーランドです。
エバーランドは昨年後半から中国野生動物保護協会やパンダセンターなどと協議して、気温や現地の状況などを踏まえ、フーバオの渡航日を決定。渡航の1週間前には、中国からパンダの獣医師が派遣され、一緒に準備しました。
渡航時にフーバオが入ったケージは高さ135センチ、長さ190センチ、幅130センチ、重さ270キロ。ちなみにシャンシャン(香香)が昨年の渡航時に入ったケージは、高さ136.6センチ(キャスター込み)、長さ168センチ、幅110.6センチで、重さ約365キロでした(参照:シャンシャン中国輸送大作戦の舞台裏)。
フーバオをのせた車(振動を最小限に抑えた車)は、エバーランドのパンダ館を4月3日(水)午前10時40分に出発。車はいったん停まり、雨の中、見送りに来た人たちの前で飼育員が挨拶しました。エバーランドによると、集まった人の数は6,000人ほどに上ったそうです。
車が仁川国際空港に着くと、四川航空のチャーター機に乗り換えです。機内の温度はパンダが好む18℃に保ち、エサの竹やニンジン、水、リンゴなどを積みました。
エバーランドの飼育員のカン・チョルウォンさんと中国から派遣された獣医師も搭乗。カンさんはフーバオになつかれ、「パンダおじいちゃん」と韓国で呼ばれている有名人です。チャーター機は四川省の成都双流国際空港へ午後7時14分(現地時間)に着き、車で臥龍神樹坪基地の隔離エリアへ午後11時34分に到着。カンさんも臥龍神樹坪基地へ行ってから帰国しました。
2024.06.05(水)
文・撮影=中川美帆