ところが驚いたことに、発達障害の人たちにおいてはまったく状況が異なる。彼らはメンタルダウンし不登校や引きこもりを続けていた場合でも、治療の手助けを受けながら、自らの特性を自覚して対応策をとれるようになると、見違えるように回復し、以前のレベルよりもさらに良い状態に達することが可能なのだ。本書ではそういった人々の「リボーン」の物語を述べていきたい。
もちろんすべての発達障害の人がすんなり回復に至るわけではない。高学歴であるために自分なりに勉強をして思い込みが強くなりすぎ、結果として回復が困難となる人も存在している。そうした場合、治療者など周囲の人の声に耳を貸さなくなりやすい。あるいは本人や家族が体裁を気にして、病院への受診や治療に拒否的な態度を示すこともある。本書では、そのような治療が困難なケースについても述べていきたい。
なお本書のタイトルに、「高学歴」という用語を用いたが、これは比較的広い意味にとっていただけると幸いである。一般的な「高学歴」ではないものの、十分な「能力」を持つケースについて、本書に含めた例もあることをお断りしておく。
また症例の記載においては、個人のプライバシーの保護のため、文脈に影響がない範囲において、固有名詞などを変更している。
本書の執筆においては、文春新書編集長の西本幸恒氏にたいへんお世話になりました。深く感謝するとともにお礼を申し上げます。さらに貴重な示唆を与えてくれた昭和大学医学部精神医学講座の先生方および昭和大学附属烏山病院のスタッフの方々に本書を捧げたいと思います。
「はじめに 弾き出されてしまう高学歴発達障害の人々」より


高学歴発達障害 エリートたちの転落と再生(文春新書 1490)
定価 990円(税込)
文藝春秋
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2025.04.04(金)