外側を考える余裕が失われてしまっていた

──近年玉田さんは『僕の好きな女の子』など映画の監督・脚本を務められたり、テレビドラマの脚本を書かれたりする機会も増えていると思うのですが、演劇以外のお仕事から影響を受けることもあるんでしょうか。

 映像の仕事に関わるようになってから、場面構成のつくり方が変わってきたと思います。以前はひとつのシチュエーションを舞台に物語を展開させていくことが多かったんですが、もっと空間や時間を飛ばしてもいいんだと思えるようになってきて。映像の場合は、むしろ同じ時間と場所だけで物語を展開させることの方が少ないですからね。ポンポン飛ばしていってもいいんだと思えるようになってから、もっとシーンを飛ばそうという意識が強くなってきたかもしれません。

──たしかに以前の玉田企画の作品はカラオケボックスや家の中など物理的にも限定された空間のなかにさまざまな要素が詰め込まれていることが多かったように思います。他方で、今回は山の中や旅館などシーンの転換も多いですよね。それもフィールドワークを行ったことが関係しているのかなと感じました。

 松田(正隆)さんのマレビトの会もフィールドワークを重ねながら『福島を上演する』のようにある土地をテーマにした作品をたびたびつくられていて、すごく面白いなと思っていたんですが、今回フィールドワークを行ってみてほかの場所に行ってみたい気持ちも強まりました。とくに行きたい場所が決まっているわけではないんですが、台北など海外に行ってみるのも面白そうだなと思っています。単に台北を舞台にした映画が好きなだけなんですけど(笑)。

──フィールドワークを行うことは、必然的に社会と接続されることでもあると思うんです。先ほど玉田さんは自分のまわりの環境があまり変わっていないと仰っていましたが、他方で社会はコロナ禍や震災などさまざまな出来事を経て移り変わってもいますよね。

 自分はずっと保護された環境の中にいて、社会の変化をダイレクトに感じられていない気がしてたんですよね。だから社会の変化を作品に落とし込もうとはあまり考えていなかった。

──保護された環境、ですか。

 もちろんいろいろなニュースを見たり社会の変化を考えたりすることはありますが、結局は依頼された仕事や目の前の作品について考える時間がすごく多いし、自分の外側について考える余裕もなくなって感度が固くなってしまっているような気がしていました。でも、今回フィールドワークを行ってみて、将来的には一回知らない場所に住んでみるくらい環境を変えてみてもいいのかなと思うようになりましたね。そういう意味でも、『地図にない』は自分にとってひとつの転機になるような作品になっていくのかもしれません。

玉田企画
『地図にない』

日時 2025年3月27日(木)~4月6日(日)
会場 小劇場B1
所在地 東京都世田谷区北沢2丁目8−18
時間の詳細はHPをご確認ください
料金 劇団前売一般 4,200円(前半割3,900円)、プレイガイド先行、一般発売 4,500円(前半割 4,200円)、ペア一般:8,600円(ペア前半割 8,000円)、U-25:3,500円(※U-25:観劇時 25 歳以下対象)、当日一般 5,000円

2025.03.24(月)
文=石神俊大
写真=深野未季